先の台風19号がもたらした大雨で新潟県を流れる信濃川の水を分流し、ショートカットして日本海へ流す大河津分水は10月13日、観測史上最高水位17.06メートルを記録しながら氾濫せずに越後平野を守りきったことから関心が高まり、大河津分水建設の歴史や偉業を伝える信濃川大河津資料館の来館者が増えている。
1896年(明治29)、燕市横田(当時の横田村)の信濃川堤防が決壊して新潟市中央区関屋まで約180平方キロメートルにも及ぶ越後平野が浸水する通称「横田切れ」が発生するなど、信濃川はたびたび氾濫して大きな被害をもたらした。
信濃川を流れる水を途中で日本海に流すことで氾濫を防ごうと大河津分水が建設された。「東洋一の大工事」とも呼ばれ、延べ1,000万人が従事して、1922年(大正11)に通水。ことしで97年になる。
国内の広い範囲に大雨を降らせた台風19号は、信濃川上流の千曲川の堤防を決壊させ、長岡市では信濃川では越水を発生させた。燕市やその周辺は大雨にはならなかったが、上流から大量の水が押し寄せ、大河津分水の水位は氾濫危険水位の16.10m、計画高水位の16.28mも超えて最高17.06mまで達した。1982年の16.23mを上回る観測史上最高を記録した。
何が起きてもおかしくないほどの状況になったが、大河津分水は越水や堤防の決壊もなく越後平野を守りきった。ふだんはその存在すら意識しないが、今回の増水では「越後平野の守り神」の役目をいかんなく発揮した。
SNSなどでは大河津分水に対する感謝の言葉があふれた。同時に数字はとっていないが、信濃川大河津資料館の来館者も目に見えて増えていて、見学から訪れる人もあると言う。1階のロビーと4階の展望室には、今回の増水時の大河津分水の写真や水位の推移グラフのパネル展示も行っており、こんなにも大河津分水が頑張っていたんだとあらためて感心。大河津分水の役割を再確認する絶好の機会だ。
また、つばめ若者会議などの主催で、インスタグラムで募集した「大河津分水に関する写真」がテーマの大河津分水フォトコンテスト「りばフォト〜川と人の風景〜」に応募された作品61点が10月1日から12月1日まで2階展示スペースで開かれており、ふだんの美しい大河津分水の姿を見ることができる。
台風19号による信濃川出水の概要の速報版は、国交省信濃川河川事務所のホームページからPDF「令和元年10月台風19号による信濃川出水の概要(速報)」をダウンロードして読むことができる。
信濃川大河津資料館は午前9時から午後4時まで開館、入館は無料。月曜が休館日で、月曜が休日の場合は開館して休日明けの平日が休館日となる。問い合わせは信濃川大河津資料館(電話:0256-97-2195)へ。