沖縄の首里城が焼失する衝撃的な事態から2日後の11月2日、新潟県立吉田高校（小竹聖一校長・燕市吉田東町）で開かれた文化祭「吉高祭」で、生徒が製作した首里城と守礼門の段ボールアートがお目見えした。作品公開直前の惨事に生徒にショックが走ったが、急きょ設置した首里城再建に充てる募金箱には1万円を超す善意が寄せられ、生徒は1日も早い再建を願っている。

2年1組の生徒36人が9月に入ってから2カ月かけて製作した。実物の約5分の1だが、それでも幅3メートル、高さ2メートルと大きく迫力があり、文化祭でも注目を集めた。

2年生は12月3日から6日まで3泊4日で沖縄へ修学旅行に行く。担任の川田好彦教諭は何度か首里城を訪れているが、建物の細かな所まで知らないことに気づき、たまたまネットで見かけた守礼門のペーパークラフトを購入、製作した。それがきっかけで、2年生の文化祭の取り組みのテーマが沖縄だったこともあり、2年1組の生徒に段ボールでの製作を提案。せっかくだからもっと大きなものをと首里城の製作に挑むことになった。

製作の中心になったのは、武田優奈さん(17)。装飾の長を務め、製作の段取りや作業の割り振りを担当した。材料の段ボールは、学校のごみ捨て場にあったものを回収したり、武田さんのアルバイト先のスーパーからもらったりして確保した。

首里城の壁の部分には赤い紙を張り、円筒形に見える赤い屋根瓦は、赤いコピー用紙を丸め、その上に部分的に白い紙を巻いて再現した。あわせて作った守礼門にも同様に作った瓦を載せたが、その数は数百本。いちばん手間のかかる作業だった。

廃棄する予定だった段ボールなので柔らか過ぎてゆがみが出るのは仕方ないが、首里城の二層になった特徴的な屋根を巧に再現し、ひと目で首里城とわかる出来栄えだ。

武田さんは「文化祭ではクラスで何か大きなことをしたいと思っていました。クラスみんなで話したり協力し合えたりしたかった」と言い、「完成したときはみんなで喜び合いました」。

文化祭本番まで残り2日、首里城焼失のニュースが届いた。苦労して製作した分、生徒には大きな衝撃が走った。「12月の修学旅行で見られると思っていたので、驚きました」と武田さん。「もう見られなくなって悲しかったけど、みんなで励まし合って」。頭を切り替えて1日も早く再建をしてほしいと、再建の費用に充てる募金箱を設置した。

文化祭は午前10時から午後1時半までの公開だったが、1万1,989円の寄付が集まった。「首里城を見たことのある人から、ここはこうだったよと教えてもらったり、首里城は見られくなったけど頑張ってるねと寄付してくれる人もいました」。

寄付は修学旅行で沖縄県庁を訪れて直接、県へ渡そうと考えている。段ボール首里城は文化祭後、空き教室に片付けているが、あまりにもよくできていたので、もっと多くの人の目にふれる場所に展示してほしいという要望があり、燕市役所に展示して募金箱も設置できないかと燕市と協議中だ。

武田さんは「本当に悲しかったけど自分たちで作った首里城を多くの人に見てもらうことで、少しでも沖縄への興味や関心が高まってくれればうれしい。ニュースでは泣いてる沖縄の人もいたので、そういった人たちに頑張ってくださいという応援メッセージも陰ながら送れたらと思っています」と願っている。