新潟県三条市下田地区の諸橋轍次記念館で11月16、17の2日間、第11回諸橋轍次博士記念漢詩大会が開かれ、16日の記念講演会と懇親会に続き、17日は表彰式と中国に伝わる流觴曲水宴(りゅうしょうきょくすいえん)が行われた。
『大漢和辞典』を編集した三条市下田地区出身で三条市名誉市民の諸橋轍次(1883-1987)の功績を顕彰する諸橋轍次記念館の主催事業として毎年、全国から漢詩を募集して漢詩大会が開かれている。
今回は347人から500首の応募があり、二松学舎大学の大地武雄名誉教授をはじめ3人の審査員により、受賞作品を決めた。最優秀賞諸橋轍次賞には群馬県の小井土政世さんの「越州途上」が選ばれた。残念ながら地元三条市からの応募がゼロだった。
17日の表彰式では、出席した26人の受賞者に国定勇人三条市長をはじめ、孫大剛中国駐新潟総領事や山田富美子三条地域振興局長から賞状や副賞を手渡したあと、庭園で流觴曲水宴が行われた。
流觴曲水宴は、流れる水に杯を浮かべ、杯が自分の前を通り過ぎるまでに詩歌をつくり、杯の酒を飲む、古来から中国に伝わる風雅な行事。諸橋轍次記念館庭園を流れる小川のほとりには、2012年に中国駐新潟総領事館を通じて寄付された中国風流觴曲水座石62個と中国風東屋1棟が設置されている。
出席者は光沢のあるガウンのような中国の伝統的な衣装をまとい、酒の代わりにウーロン茶を注いだ杯を取って詩を詠んだ。さすがにその場で詩をつくるのは難しいので、ほとんどの人があらかじめ考えておいた詩を筆で短冊に書いた。中国に留学経験のある国定市長は詩を中国語で読み上げ、孫中国駐新潟総領事は日本語で読み上げた。
明け方まで雨が降ったが、流觴曲水宴が始まったころには日も差した。周囲の山々は紅葉に染まって秋の風情にあふれ、雰囲気満点だった。受賞者は13歳から99歳までで、13歳の2人と99歳の1人には特別賞が贈られた。
13歳のうちひとり、東京都練馬区に住む中学1年生の樋口治郷さんは大会に出席した。父は埼玉県で国語を教える高校教諭で毎年、応募し、3年前に受賞して三条市を訪れている。学校でも生徒に漢詩を教えており、今回はその父に勧められて初めて応募した。
千葉県の祖父の家でヘビに出会ったことを「夏日遊故園」の題目で詩にした。「お父さんにも手伝ってもらったので、来年はちゃんとすべての言葉を自分で考えて結句までつくりたい」と話していた。