10月13日に台風19号による大雨の影響で初めて避難所が開設された新潟県燕市の燕市立分水小学校(小島和浩校長)で12月3日、6年生を対象に避難所の運営をゲームで模擬体験する防災教育が行われた。
6年生3クラス78人のうち1クラスはインフルエンザで学級閉鎖のため、2クラスの51人を対象に参観日を利用して体育館で行い、保護者も見学した。
防災カードゲーム「避難所HUG」を使った模擬体験。冬の日曜の午前11時に燕市で震度6強を観測する地震の発生を想定。停電、断水でトイレが使えなくなった分水小学校の体育館と2つの学習室を避難所に見立て、校舎の図面を広げて対応を考えた。
避難者カードとイベントカードがあり、避難者カードは異なる家族構成の避難者が書いてある。赤ちゃんもいれば高齢者もいて、ペットを連れた家族もいる。イベントカードでは物資の荷下ろしが始まったり、トイレがいっぱいになったり、テレビ局が取材に来たりといったできごとが起こる。それらの状況を判断して避難者の配置や対応を考えるゲームだ。
ゲーム後、児童は「いろんな場面の対応を考えるのがおもしろかった」、「取材は誰も通らない職員玄関の端でやらせた」、「いろんな人が避難所に来るのがわかった」などと感想や対応を発表した。
指導にあたった信濃川大河津資料館コーディネーターの樋口勲さん(44)は「同じケースでも人によって考え方が違うことを知ってほしかった」、近所の高齢者や看護師などを知ることが避難所運営に役立つので「ふだんから地域の人と良く話をしてほしい」、「ふだんからやっていないことは急にはできない」と、たった今からできる防災の備えを児童に期待した。
台風19号による大雨で分水地区にある大河津分水は計画高水位を超えて観測史上最高の17.06mに達し、いつ氾濫してもおかしくない切迫した状態になった。氾濫したら大きな浸水被害を受ける分水地区には、各地に初めて氾濫を想定した避難所が開設され、分水小学校も避難所になり、ピーク時は200人以上が避難した。
防災ゲームを体験した6年生の女子は、両親ときょうだいの家族5人で10月13日の午前10時ごろから午後3時ごろまで、この分水小学校の体育館へ避難した。「大河津分水の水位が上がって、やばいんじゃないかと家族で話し合って避難することにした」。
「体育館にいたら、上の階へ上げてほしいと話している人がいた。これからどうなるのか不安だった」と当時を思い出し、この日の防災ゲームであらためて「どんな状況にも臨機応変に対応する大切さがわかった」と話していた。
信濃川の水を分流して日本海へ放流することで信濃川の氾濫を防ぐ大河津分水は、越後平野の守り神であり、分水地区のシンボル。分水小学校は積極的に大河津分水を生きた学習教材にしている。
防災教育も毎年、行っているが、信濃川大河津資料館と情報交換するなかで春先に初めて防災ゲームを行うことを決めていた。小島校長は「子どもたちが中学生、高校生になったときに避難所でリーダーシップを発揮してくれるようになればいい。大河津分水をいろんな所に発信して、大河津分水の大切さを広めるようになってくれれば」と願っていた。