放射冷却現象で12月9日の明け方、新潟県・三条はこの冬最低の−2.6度まで気温が下がり、三条市・大崎山からは見渡す限りの雲海ならぬ“霧海(むかい)”が広がった。
大崎山山頂付近から北西の方角にコンパクトデジカメのレンズを向けた。下界はすっぽりとやわらかな綿のような霧海に覆われ、その上に顔を出すのは日本海から立ち上がる弥彦山や角田山。空は青一色から地平線に向けて赤くグラデーションがかかる。高い山から見る雲海と同じ風景が広がり、わずか標高120メートルの大崎山からは想像できない絶景だ。
撮影したのは、三条市曲渕に住む皆川義文さん(56)。自転車愛好家で午前5時半に起床し、6時半ごろから散歩に出かけると五十嵐川に霧がかかっていた。何度も大崎山から霧海を見ている皆川さんは、今なら霧海が見えるはずと家に取って返し、自転車に乗って大崎山を登ると想像した通りの見事な霧雲が広がっていた。
皆川さんに言わせれば「そんなに珍しくない。大崎山を散歩している人も目もくれない」。とはいえ「ふつうの人はたった100メートルちょっとしかない大崎山からこんな風景が見えるとは思いませんよね」。霧海が見られるのは冬。「冬の天気は嫌になりますが、こういう楽しみでもないと」と気持ちをちょっぴりあたたかくしてくれる皆川さんにとっての冬の風物詩だ。