12月6日から出張カキ小屋が開設されている新潟県三条市の「ステージえんがわ」で、いずれも東京・六本木で腕を磨いた片や地域おこし協力隊のイタリアン、片や三条スパイス研究所の焼き鳥職人2人のシェフがそれぞれ佐渡産のカキを使った料理を数量限定で提供。ハイレベルなカキ料理対決を繰り広げている。
麻布十番のイタリアンで働いた渡辺シェフが「牡蠣と春菊のトマトソースパスタ」
地域おこし協力隊は渡辺俊樹さん(46)。三条市出身でことし4月に着任し、NPOソーシャルファーム三条で活動している。六本木は麻布十番のイタリアンレストランで15年間、働いたほか、別の六本木や銀座の飲食店でも働いた。
「牡蠣(カキ)と春菊のトマトソースパスタ」で税込み1,000円で、ポイントは佐渡産のカキ。生の状態からグリルで焼くのが一般的だが、下ゆでしてから焼く。これによりカキの香りが強くなると言う。
皿に盛りつけたらイタリアンパスタをのせて香り付けするところだが、よりカキに合うものをとシュンギクをセレクト。「冬のパスタのイメージ」と渡辺さんは言う。
何よりも魅力はカキの量の多さ。1人前に実に12個ものカキを使っていて、お得感満点、カキ好きにはたまらない。屋台のような店なので、それなりの味を想定すると、いい意味で大きく裏切られる。「おいしかった!」、「すごいカキがたくさん!」と驚きや感動の声もあり、大好評だ。
三条市からの勧めもあって9日からステージえんがわの軒下に出店。10日(火)、11日(水)、12日(木)、16日(月)、17日(火)、19日(木)、20日(金)のいずれも午前11時から営業し、30食限定でなくなりしだい終了する。
芋洗坂の焼き鳥屋で働いた岩田シェフが「佐渡牡蠣とコブミカンのフォー」
一方、三条スパイス研究所はステージえんがわ内にある食堂で、2016年から働くシェフの岩田靖彦さん(38)。東京生まれの宮城県仙台市育ち。六本木は芋洗坂の焼き鳥屋で9年働き、銀座の日本料理店で働いた経験もある。
ふだんからベトナム料理の米粉麺の料理「フォー」にスパイスカレーを使った「スパイスカレーフォー」を提供しているが、8日からカキを使った「カキフォー」をこれまでと同じ税込み880円で提供している。
佐渡産カキを2日間、昆布締め(こぶじめ)。カキを昆布ではさみ、日本酒も入れて一夜漬けのようにして脱水し、うまみをカキに封じ込める。それをタイ料理に欠かせない柑橘系のコブミカンの葉などとオイル漬けしてフランス料理の調理法のコンフィのようにする。
こうした手間のかかる下ごしらえを施したカキのコンフィを形のままやペースト状にしてフォーを作る。それに負けないように米粉麺をこれまでのものより1.5ミリ太くし、辛味、うま味、酸味などが複雑に折り重なり、今まで味わったことのない創作料理のような仕上がりになっている。
冬季限定メニューとして1日限定10食の提供。午前10時から営業し、定休日は水曜と第1火曜だが、二七の市が開かれる日は営業し、その翌日を休業する。
出張カキ小屋がきっかけで、計らずも六本木の飲食店で腕をふるった2人のシェフがステージえんがわでカキ料理対決。渡辺さんはカキを使ったパスタの頂点を極めようとし、岩田さんはほかにはない新しいカキ料理を目指した。方向性は異なるが、いずれもこの冬、一度は味わってみたい絶品だ。