キャンドルアーティストのキャンドル・ジュンさん(45)が代表に就く一般社団法人LOVE FOR NIPPONは、台風19号がもたらした豪雨でことし10月13日に長野県長野市で千曲川の堤防が決壊し、浸水した地域でリンゴ畑の泥出し作業を続けている。12月21日は新潟県三条市からボランティアと支援物資を届けた。
LOVE FOR NIPPONは、東日本大震災を契機に震災直後から「できることはすべてやろう」とオークションやフリーマーケットで寄付を募り、避難所や仮設住宅を訪問し、ニーズに応えて交流を続けた。毎月11日に福島県をはじめ各地でキャンドルナイトも続けてきた。
その後も2016年の熊本地震など各地の被災地支援に活動の場所を広げた。長野市には堤防決壊の直後に支援に入り、ニーズを探った。浸水地域は広大なリンゴ畑が広がる。泥出しは民家が優先で、リンゴ畑は後回しになった。リンゴ畑のなかでも長沼林檎生産組合が所有するリンゴ畑「ぽんど童」はさらに後回しになった。
そこでLOVE FOR NIPPONは千曲川周辺のリンゴを畑を支援する「リンゴスタープロジェクト」をスタートした。ボランティアを募って週末を中心に「ぽんど童」の泥出し作業を続けている。多い日は百人近いボランティアが集まる。
この地域は農家の高齢化もあり、管理できない畑が増えている。病害虫予防の観点からもできるだけ遊休農地を減らそうと2009年に組合を設立してリンゴ畑を共同管理している。今では管理するリンゴ畑は合わせて2ヘクタールにもなる。
今回の水害では、浸水深は2メートルから3メートルにもなった。リンゴの果実すべてが水に浸かったわけではないが、ほこりや雑菌の問題もあってまったく出荷できず、全滅した。畑には粘土質の土が20センチ前後も堆積。畑にふたをしたような状態になり、このままでは根が酸素を吸えず、確実に木は弱り、枯れる恐れもある。来年3月中に泥出しを終わらせなければ、来年の収穫にも大きな影響が出る。
徳永慎吾組合長(39)によると、「全体の10分の3ぐらいの泥出しが終わった。来年3月までに作業完了が間に合うか、間に合わないかといったところ」。リンゴスタープロジェクトに「すごく助かっている。物資の支援もうれしい。専門的な三条の剪定鋏(せんていばさみ)までもらえ、これからもかかわりをつなげていきたい」と話す。
三条市・サイトウ建築代表の斉藤巧さん(43)は早くからLOVE FOR NIPPONに参画し、キャンドル・ジュンさんと行動を共にし、今は理事で新潟支部長に就く。21日は三条市から渡辺果樹園の渡辺康弘さん、包丁製造・ダタフサの大澤真輝さん、ニッパー型つめ切り製造・諏訪田製作所の水沼樹さんもボランティアとして現地に向かった。全体で100人近いボランティアが参加してスコップを使って泥を掘ってはトラックに載せて運び出した。
あわせて渡辺果樹園から西洋ナシ「ル レクチエ」60個、諏訪田製作所からつめ切り2個とクリとギンナンの殻を割る道具を4個ずつ、タダフサから出刃包丁や小三徳包丁など約30本を寄付し、キャンドル・ジュンさんに渡した。
ほかにもこれまで小林製鋏が摘果鋏、永塚製作所がスコップ、山谷産業が日用品、パール金属がキッチンツール、カンテツがコロッケ、燕市のユニフレームがガスボンベなどを寄付している。
三条からの支援に「最高ですね」とキャンドル・ジュンさん。「ラブフォーニッポンは何をする団体という考えではなく、被災地域に行って現地のニーズに対して支援者とのマッチングをするのが大切と思っている。こういうものがないと言うと三条の仲間たちが、声をかけてくれ、物だけでなく物を作っている人も連れてきてくれ、直接的な交流が生まれる。良くも悪くも企業のプロモーションとして考えてくれれば」と感謝した。
これから雪のシーズンになり、「回数を減らしつつも交流を続けていくことが大切。春、リンゴの花が咲くころにまた集まって花見をしようと。春に消毒の機械が入るので、そのときに泥がたくさんあっては入れないので、春までには何とかしなければ」と話した。
毎週のように現地を訪れてボランティアに当たっている斉藤さんは「プロジェクトは来年の収穫が終わるまで続ける。最後に収穫祭ができたらいい」と夢見る一方で、「まだまだ人手が足りず、やることはいくらでもある。支援物資もとりあえず今は暖房機器が必要になっている。もっと情報を発信して協力をお願いしたい」と人的、物的な支援を待っている。支援に関する問い合わせは斉藤さん(090-7405-0932)へ。