新潟県・燕三条発の家電ブランド、ツインバード工業株式会社(野水重明社長・本社燕市吉田西太田)は1月9日、燕三条ワシントンホテルで恒例の新春賀詞交歓会を開き、取引先や協力会社150社から217人が出席。野水社長は「過去の延長線上にはもう未来はない」厳しい見方を示し、持続可能性を追求する企業への変革を目指してことしのテーマに「外部環境に負けない強い企業体質づくりと利益重視の経営」を掲げた。
野水社長はあいさつで、同社が無事に新年を迎えられたことを出席者に感謝した。ラグビー日本代表で新潟工業出身の稲垣啓太選手、箱根駅伝で総合優勝した青山学院大学1年生の燕市分水地区出身の岸本大紀選手、全国高校サッカーのベスト4に進出した帝京長岡高校など新潟出身の若者たちの活躍にふれ、「私たちは若者に負けないように皆さまと一緒に実りある素晴らしい1年にしたい」と話し、本題に入った。
近年の外部環境は少子高齢化、グローバル化、デジタル化、働き方改革など生活者のライフスタイルが多様化。消費構造の変化が進み、モノからコトへ、そこでしか体験できないことに価値を求めるといった消費へ移行していると言われる。
世界経済は米中の貿易摩擦、イギリスのEU離脱問題など不透明感が続き、国内は消費税増税などの変化があり、年初からアメリカとイランの問題が起きた。7月の東京五輪では駆け込み需要とその反動が予想される。11月にはアメリカ大統領選挙があり、AIや5Gなどデジタルサービスが本格的に普及する年と言われる。
「非常に激しいスピード感をもった外部環境の変化のなかで、過去の延長線上にはもう未来はないと腹をくくっている」と覚悟し、「ここ数年の当社の状況を鑑みて、より力強く成長し、持続可能性を追求する企業へと変革するために、2020年度は外部環境に負けない強い企業体質づくりと利益重視の経営をテーマに掲げた」。
ブランディング、海外事業の推進、スターリングクーラー事業の推進の3本の矢を成長戦略として推進してきたが、「ことしは地道な利益改善の積み重ね、全社を通じた総点検を徹底的に行うことによってビジネスモデルの変革を加速するための投資原資を確保しつつ、しっかり筋肉体質にして財務の健全化を図りたい。投資、あるいは成長のフェーズに向けた中長期的な戦略、ツインバードの勝ち筋をしっかりと塗り込んでビジネスモデルの深堀りを進めたい」。
中長期的な成長の実現のため昨年、管理部門、営業部門、管理生産部門に力強いメンバーを経営陣に迎え、新体制を築いた。ツインバードは経営理念に沿って燕三条発プレミアム家電メーカーとして革新的な製品、サービスを提供し続けたいと考える。
2020年は先代社長から事業承継してちょうど10年目の大きな節目を迎える。事業承継してから多くのチャレンジを進めてきて、その成功事例として本社工場で製造する全自動コーヒーメーカーが大ヒットし、4万円という高価格帯ながら累計販売台数は15,000台に達し、堅調に売れている。「燕三条地域の最高の技術が結集した付加価値型製品」と感謝した。昨年のグッドデザイン賞では応募した3製品とも受賞した。ハンディースチーマー日本国内で1年半で2万台を販売し、台湾は発売1年で累計8万台を販売した。
世界初の量産化に成功した画期的な冷凍技術のスターリングクーラーに投資を続け、事業の拡大を進める。昨年はアメリカで冷凍冷蔵をテーマとした世界最大級の博覧会にスターリング製品を出展。ドイツのデュッセルドルフで世界最大の医療機器の商談会にも出展し、多くの引き合いがあり、医療運搬の分野や高精度計測の分野などで販路開拓のきっかけができた。
「このスターリングクーラーで燕三条地域の金属加工を中心としたものづくりを生かして世の中にイノベーションを起こしていきたい」として、出席者の支援、指導を求めてあいさつを締めくくった。昨年は新役員を多く迎えたことから、このあと全役員の紹介も行った。