新潟県三条市内でスーパー「あいでん」3店舗を展開した株式会社あいでんが2018年11月に事業を停止。それから2カ月、3店舗のうち市内商店街のど真ん中にあった「あいでん本町店」(本町3)の向かい、大光銀行三条支店前駐車場で1月15日、移動スーパー「とくし丸」が週1回の販売をスタートした。心配された買い物難民のまさに救世主になることが期待される。
「とくし丸」は、徳島県徳島市に本社を置く企業が展開する移動スーパー。各地の地域スーパー、販売パートナーが運営する。今回、販売を始めたのは見附市に本社を置く「スーパーマルイ本成寺店」。三条市内の個人宅を訪問し、栄地区と本成寺地区へそれぞれ週2回、下田地区へ週1回、出向く。それに新たに本町での販売が加わったことになる。
本町では毎週水曜の午後0時15分から0時45分までの30分間、販売する。軽自動車を改造した移動販売車は冷凍庫まで備え、左右と後ろの扉を開くと約400品目、1,200点もの商品が並ぶ。刺身、すし、総菜、肉、野菜、果物、パン、日曜品など見た目からは想像できない驚くほど豊富な品ぞろえだ。商品の値付けはあいでんの店舗と同じだが、1商品につき10円プラスになる。
少しでもたくさの商品のあるうちにと、営業開始時刻前から訪れる人が多かった。ほとんどは高齢の女性で、販売開始当初はタイムセールのように商品の品定めをするのままならないほど混雑した。調理の手間がかからない総菜が人気だった。
歩いて1分のところに住む小林乃里さん(91)は、ふだんは買い物は子どもや孫に頼んでいるが、「自分で行かないと思うようにならない」と歓迎しながらも「ないよりはいいけど」と品ぞろえの物足りなさや、「奥にある商品が見えない」とも話した。
80歳代の女性は「あいでんがあるときは、買い物は遠くのスーパーに行って、足りないものがあるとあいでんで買っていた」と、あいでんの売り上げにあまり貢献してこなかったことが申し訳なさそうで、「まだ慣れなくて商品が見にくい」、「わきから手が出てきてなかなか買い物ができない」と戸惑っていた。
この日、買い物をしたのは30人とまずまず。ただ、ほかの地区では個人宅へ出向いているので、仮に客が1人になっても本町での販売は継続すると言う。
本町1丁目から4丁目の各自治会では、三条市と協力してあいでん本町店のイートインコーナーで高齢者の居場所づくりなどに取り組んできた。あいでん本町店の閉店で買い物難民の問題が急浮上し、その対策のひとつとして紹介された移動スーパーに自治会をあげて協力することに。回覧板でちらしを配布して移動スーパーの営業を周知した。
初日のようすを見に来た本町3丁目の自治会長、羽生豊雄さん(65)は「町内には車で動けない人が大勢いる。わたしだって他人事ではない」。スーパー、薬や衣類が変える場所まで住民を車で運ぶというアイデアもあり、「どれだけ地域の困っている人たちのためになれるかが成功のかぎになる」と言い、移動スーパーが地域の高齢者の買い物の手助けになることを期待した。