「節分」の2月3日に新潟三条市・法華宗総本山「本成寺」(門谷日悠貫首)で行われる節分会で鬼踊りを演じる鬼踊り奉讃会(石丸幸広会長・会員21人)は、本番に向けて本堂で連夜の練習を続けて踊りに磨きをかけている。
本成寺の鬼踊りは毎年2万人前後もの参拝客を集め、三条の名物行事でもある。その鬼踊りを支えているのが、法華宗の檀家の有志を会員とする鬼踊り奉讃会。ことしも本番の半月前の1月16日から土、日曜を除く毎晩、8時から9時ごろまで本成寺本堂で練習を続けている。
1月29日の練習も8時までに直檀部屋、通称「鬼部屋」に集合し、打ち合わせしてから本堂へ。本堂の正面を入ったところに12畳、左右にそれぞれ8畳の舞台が設置してあり、週明けの27日から舞台の背後の障子戸を明けた本番仕様で練習している。
練習を始める前に正面の舞台に正座して「南無妙法蓮華経」と題目を唱え、読経してから、ウオーミングアップ代わりに一列になって足踏みを練習した。ジャージーを着た会員は、太鼓とどらの音に合わせ、足を大きく開き、高く振り上げて歩き、大きな声を上げた歩いた。見ているとわからないが、これだけで予想以上に体力を使い、息が上がった。
前日29日に配役が決まった。その配役にしたがって1回目と2回目の鬼踊りを1回ずつ、通しで練習した。鬼の面を付け、金棒やのこぎりなどの道具も持ち、衣装を着ていない以外は本番さながら。踊り終わるとしばらく立ち上がれないほど消耗し、髪は水をかぶったように汗でぬれた。
練習の見学の希望があれば原則としてすべて受け入れている。この日も会員の知り合いの親子など10人余りが見学に訪れた。子どもたちが会員が素顔の状態から見ていたが、鬼の迫力に圧倒されてしだいに食い入るように見入り、中には鬼におどかされて泣き出す子どももいた。
練習では3つの舞台をそれぞれビデオ撮影し、練習を終わって鬼部屋に戻ると撮影した映像をプロジェクターで映しながら、あらためてそれぞの動きをチェックし合い、ブラッシュアップに余念がない。本番に会員の間でインフルエンザが流行することだけは避けなければならない。新型肺炎の感染が拡大しているが、練習後はみんながうがいをして予防するのも恒例だ。
会長の石丸幸広さん(58)は24年ぐらい前に入会し、会長に就任して9年になり、ことし3月末で会長を退く。会長になってからは踊っていない。「踊りは時代とともに洗練されてきた。どうやったら迫力がでウルか、みんな考えながらやっている」と努力を続けてきたことを振り返り「好きだからここまで続けてこれた。いろんなことがあって、それが今の自分に成長させてくれた」と感謝する。
鬼踊りの「センター」は、正面のステージの真ん中で踊る赤鬼の大将。2回目の鬼踊りでは、ことしで入会11年になる加藤哲夫さん(40)が初めて赤鬼の大将を務める。
赤鬼の大将は全体の流れを決める指揮者の役割を担い、ほかの鬼たちはその動きを合図に踊る。「自分の技術面や気持ちもさることながら、今回は周りの踊りを見ながらの踊りになる。そのうえで最高のパフォーマンスに専念したい」と加藤さん。「今までとは、まったく別の緊張感がある。やっぱり大将は重みが違う。ここまできたらやり切るしかない」と決意を示した。