新潟県加茂市に本部を置いて書道教室を開く下田書道会は、学問の神とされる菅原道真が描かれた掛け軸が初代の遺品の中から見つかったことから道真の命日の2月25日(火)、生徒の書道の腕が上がることを願って天神講を行う。
加茂市と新潟市に3教室ずつ、見附市に1教室の7教室のうち、加茂市にある本部教室「幸町教室」で幸町教室に通う小学校低学年の生徒だけ20人余りが参加。幸町教室に隣接する自宅で午後4時半から天神講を行う。
床の間に道真の掛け軸を下げ、畳に正座して「永」の字を筆で書いて基本点画のつけ、とめ、はねを練習する。生徒には下田書道会の3代目、彩水さんが書いた「天神様」の字句をプリンとした直径9cmの丸い特製アイシングクッキーをプレゼントする。
昨年、元号が平成から令和にあらたまる前に加茂市の和菓子店「菓房処 京家」が新元号「令和」の書をデザインしたアイシングクッキーを販売した。彩水さんはその書の揮毫(きごう)を頼まれた経験から、天神講のクッキーを思いついた。春を呼ぶサクラとウメの花の背景に書を重ねて彩水さんがデザインした非売品だ。
下田書道会は、開設から50年以上になる。小学校教諭と書道の指導者の二足のわらじをはき、退職後に書道教室を始めた初代の志水さんは、彩水さんの祖母。2年前に97歳で亡くなった。ことしに入って志水さんの書を中心とした遺品を整理していたときに、道真の掛け軸を見つけた。
「天神」と呼ばれた学問の神とあがめられた道真にちなみ、命日には道真の掛け軸を飾って学業成就や合格を祈願する風習である天神講が、今も各地に伝わっている。燕市では全国的にも珍しい天神講菓子を供えることで知られる。
加茂市では天神講の風習は残っていないようだが、遺品に道真の掛け軸が見つかったことから、子どもたちの成長を願い、加茂市でも天神講が根付くことを願って初めて天神講を企画した。道真は学問にとどまらず、和歌や書道の神としても親しまれる。
見つかった掛け軸はあまり古くはなく、志水さんがどうやって入手したかはわからないが、燕市や見附市から書道教室に通う生徒からもらったのではと、彩水さんは推測する。
「このタイミングで掛け軸が出てきたのもいい機会で、加茂市長も子育てに力を注いでいるので」と、彩水さんが藤田明美加茂市長に声がけしたところ、当日は激励に来てくれることになった。
「生徒から楽しんでもらえるのがいちばん」と彩水さん。「子どもたちは今から楽しみにしてくれていて、楽しかったなと思って書道が好きになってもらえればうれしい。そのためにも年に何回かイベントをやっていかないと」と子どもたちの励みになる趣向を考えている。