金属加工業の集積地、新潟県燕市の業界4団体は3月12日、新型コロナウイルス感染者が発生した企業を支援する協定を締結。感染者が発生して工場が稼働できなくなっても、ほかの企業が製造を肩代わりして安定供給できることをアピールし、取り引き関係の維持を図る。
協定を結んだのは、燕商工会議所、日本金属洋食器工業組合、日本金属ハウスウェア工業組合、協同組合つばめ物流センター。燕商工会議所で協定調印式を行い、4団体の代表が協定書に調印した。
これまでも地元企業では、何かの理由で工場が稼働できなくなった場合に、ほかの企業が肩代わりすることは当たり前に行われてきた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って取引先から感染者が発生した場合の企業の対応や供給の担保を問われるケースが出てきた。
そこで感染者が発生しても肩代わりする企業があることを業界として対外的に周知するとともに、この協定により4団体で支援会議を設置し、これまでは個別の企業で肩代わり先を探していたところを支援会議が手伝うことで選択肢が広がり、同業他社を含め個別の企業では頼みにくい企業にも支援会議を通してあっせん。肩代わり先を探すいわば駆け込み寺のような機能も果たす。
燕商工会議所の田野会頭は「燕一丸となって客の注文が逃げないようにできる対策はすべてうつ」と意気込みを示した。政府は強力な金融支援を打ち出しているが、実際には「資金繰りがついたから会社が存続できるということはない」と万能薬ではないとし、「4団体の皆さんからご協力いただき、善後策を講じていきたい」と述べた。
日本金属洋食器工業組合の小林貞夫理事長は、肩代わりは1組合では難しいところもあり、「この緊急事態に何かしら対策がとれるのでは。これはぜひ協定をさせていただきたいと思った」。日本金属ハウスウェア工業組合の池田弘理事長は「個々の企業のつながりはあるが全体として取り組むネットワークはない。これは絶対にいいこと」、協同組合つばめ物流センターの志田收理事長は「協定を深めながら対策を講じていきたい」と期待した。