新型コロナウイルスの感染拡大防止で外出を我慢している子どもたちに楽しんでもらおうと、新潟県燕市の「町工場のおやじ」が会社の技術を生かした動画をTwitterに投稿し、5日間で40万回を超える再生で大きな注目を集めている。
今、困難を乗り切ろうと頑張っている全ての人へ。
— 森下一 (@kyoritsu_1962) March 28, 2020
それと、出かけるのを我慢している子供達が楽しめるように。
町工場のおやじが機械を使って出来る事はこんな事くらいしか思いつかなくて。
大変だけど、みんなで頑張ろう。 pic.twitter.com/3sC68NK7x3
127×89ミリのステンレスの板の上に1点の赤い光が輝いている場面から始まる。目に止まらない速さで左右に光が走ったかと思うと、またたく間に溶け落ちるような地球とウイルスのイラストが描かれる。
すると下から水が増えていくように絵が消えていき、さらに右から左へ、4辺から中心へと光が進んで板がまっさらな状態に戻ると、今度は両手の中に地球が包み込まれたようなイラストが描かれ、その上に「NEVER GIVE UP.」の文字が現れる。さらに文字の色が濃くなっていき、まるで手品を見ているかのようなちょうど1分間の動画だ。
3月28日に投稿し、それからわずか5日目の4月1日は再生回数が40.5万回、1.2万リツイート、2.5万いいねにのぼっている。「素晴らしい動画!」、「町工場のおやじさんはやっぱりすごい!」、「この過酷な世界を生きる者すべてへの、熱いエールを感じます」といったツイートが寄せられた。
動画を投稿したのプレスや深絞りなど金属加工を手がける燕市小関の協立工業株式会社の森下一社長(32)だ。あっという間にレーザー光で絵が描かれるのもさることながら、絵が消えるのが不思議。これはより深く板を彫ることで消すことができ、最後のメッセージは最大出力で彫って焼き色を出した。
森下社長は昨年11月にTwitterアカウント(@kyoritsu_1962)を作成。当初は1億円を超す機械を使った動画を使ったが、拡散されなかった。「難しいことじゃなくて、わかりやすくて、くだらなくて、おもしろく」と考えてレーザーマーキングを使った動画を思いついた。
レーザーマーキングの機械は必要に迫られて導入したわけではない。B to Bでトレーサビリティー用のバーコードの印字に使おうと試験的に導入したが、まだ本格稼働には至っていない。昨年12月9日に投稿したレーザーマーキングで「Twitter」の文字を描くだけの動画は1日までに再生58万回を数えている。
地元の燕三条地域は金属加工産業の集積地で、レーザーマーキングはどこにでも当たり前にある技術。当初は、地元から「何をいまさら」と批判的な声もあったが、「協立がどんな会社なのか知ってもらうきっかけになれば」とさまざまな動画の公開を続けている。
新型コロナウイルスの影響は人ごとではない。これから受注が減少していくのは間違いない。とはいえB to BにとどまらずB to Cにも取り組んでおり、1日から本格的なB to Cを「BEAM+DAYS」の商標でも動き出したばかり。「協立のファンになっていただけるような消費者がいないと。一般の人に伝えることが零細企業の強みになっていく」と話している。