このままではマスクがなくなってしまうという切実な状況から、真宗大谷派三条別院(森田成美輪番・新潟県三条市本町2)は4月8日、僧りょが自らマスクの手作りを始めた。
材料は三条別院で100円で販売している仏具の掃除などに使う三条別院の名入れマイクロファイバークロスと、500円で販売しているオリジナル手ぬぐい。マスクの型紙を使ってミシンで縫っている。マイクロファイバークロスは「三条別院」とある刺しゅう部分をあえて切り取ってマスクの表に縫い付ける。ありがたげで効能も高いような気がする。
製作に当たるのは斎木浩一郎さん(38)や廣河淳さん(26)ら三条別院の列座の僧りょ。本山の方針に準じて研修や諸会議は原則中止、法要は職員だけで行い、職員のマスク着用、手洗いや消毒など予防対策を徹底している。
「こんなときに坊さんなんで、なにかしなきゃと思って」と斎木さん。職員用のマスクをドラッグストなどで入手してきたが、さすがに手に入らなくなってきて、このままでは2カ月もすると底をつく。そこで、マイクロファイバークロスの在庫があることに目を付け、再利用できるマスクを作ることを思いついた。
斎木さんは自宅にあったミシンを三条別院に持ち込んで作ったが、裁縫の腕は小学校の家庭科レベル。試作一号機は「着けれるっちゃ着けれるけど」とぎりぎり及第点に苦笑い。「1日1枚ぐらい作っていきたい」と言い、列座の5人で製作していくつもりだ。
廣河さんは針を持って手縫い。斎木さんは「われわれの生産能力はたかが知れているので、本当にマスクがなくて困っている人と一緒に作ろうかな」と考えている。
政府は1世帯2枚の布マスク配布を計画しているが、2枚では足りないという声が多い。斎木さんは「この手作りマスクでローテーションできるので、家のなかで家族でしゃべるときにも飛沫(ひまつ)を防ぐことができる」と言い、ほしい人があれば声がけをと呼びかけている。
ピンチはチャンス。職員は時間に余裕ができたので、この機会に何十年もそのままになっていた倉庫の整理清掃も行っている。また、厳しさを増す飲食業界を支援しようと昼食は飲食店デリバリーを利用している。