田植えを前に新潟県三条市のJAにいがた南蒲では水稲育苗作業がピークを迎えている。昨年は猛暑の影響で主力のコシヒカリが過去に経験のない1等米比率の低さ。V字回復を目指したコメ作りが始まる。
三条市下田地区・笹岡地内のJAにいがた南蒲下田育苗センターでは、下田地区の播種(はしゅ)を一手に担っている。組合員の注文は例年並みで育苗箱(28×58cm)約14万枚。品種はコシヒカリ10万枚、こしいぶき2万6千枚をはじめ、新しい新之助やもち米のコガネモチ、酒米の五百万石など11品種ある。発芽後の育苗は下田地区の飯田と森町の施設でも行う。
下田育苗センターでの播種は4月6日に始まった。播種機で自動化され、育苗箱がベルトコンベヤーを流れて下から土、種、土を載せて完了。それを室温30度に設定した発芽室に入れる。
3日たって発芽したらビニールハウスに入れて育苗する。苗の長さではなく、2.5葉期と呼ばれる状態まで育てて出荷となる。育苗箱をビニールハウスに移す作業が最盛期を迎えている。水を含んだ育苗箱は6kg前後になり、薄っぺらい育苗箱の見た目以上に重く、体に負担がかかる作業だ。
苗の出荷は5月2日から、コシヒカリは9日からを予定している。昨年は8月14日、15日とフェーン現象で気温が40度を超えるなど厳しい猛暑に見舞われ、管内のコシヒカリは1等級比率3.0%、3等と規格外を合わせて66%以上と、過去に経験したことのない結果となり、3年連続県内トップクラスの座を明け渡した。2017年、18年と2年連続の作柄不良が続き、昨年こそは作柄回復と願っていたにもかかわらず最悪の結果にショックは大きい。
ことしはなんとしても品質のV字回復をと、土づくりにも取り組んでいる。昨年は遅植えの品質が高かったことから、確実な根拠はないがことしは例年より遅めの田植えを指導している。
とはいえ、苗のできで作柄の半分が決まるという意味の「苗半作(なえはんさく)」の言葉があるように、育苗はコメ作りの大切な作業。北営農センター米穀課の三本和明さんは「天気をハウス内が暑くなり過ぎないように日々の生育状況を見ながら管理する」と言う。
管理を怠って苗が全部だめになる夢を見てはっと目が覚めることがあるというほど、年に1回しか作れない稲作にとって絶対に失敗できない作業のプレッシャーは大きい。ただ、ここ数日は冷え込みが続き、逆に低温を心配している。
今シーズンの記録的な暖冬少雪で下田地区の山にはすでに残雪がわずかしかない。「どこまで水がもつのか」と収穫するまで心配が絶えない。