新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、先に新潟県三条市は友好都市の中国重慶市巴南区(はなんく)に医療物資を贈ったが、中国で一足早く感染症が収束していることから、今度はその巴南区から三条市へ医療物資が贈られた。
新型コロナウイルスが中国の湖北省武漢から感染が広がって深刻化していたころ、三条市は2月4日、武漢の南東に接する友好都市の湖北省鄂州市と重慶市巴南区に感染症対策のための医療物資を発送した。三条市と巴南区は2019年6月に友好都市となっている。
今度は日本で間瀬が広がるなか、中国では一定の収束をみていることから、お返しにと巴南区から三条市へ贈られた医療物資が4月27日、三条市に到着した。内容はアイソレーションガウン1,000枚、医療用フェイスシールド1,000個、医療用キャップ40,000枚。午後から市役所第二庁舎前に届いた38箱もの段ボール箱を積み上げ、中国駐新潟総領事館の殷達奇(いん・たつき)副総領事も出席した。
段ボールには「出入相友 守望相助 一緒に出入りする 互いに協力を見守る 巴南区 ♥ 三条市」とある紙が張ってある。三条市は段ボール箱の前に「感謝重慶市巴南区! 疾病相扶持 則百姓親睦」とある紙を掲げた。
段ボール箱にあった言葉は、孟子(もうし)の巻第5 滕(とう)文公章句上の井田法(せいでんほう)の一部で、三条市の言葉はそれに続く一節。続けて「いつでも互いに友人のように接し、共に見守り助け合おう。病気の時は互いに助け合い、民は親睦するようになる」となり、医療物資を相互に寄贈したことは、まさに孟子がのこしたこの金言を体現している。
また、航空便の減便で物資の輸送が滞っているなかで、スムーズに通関手続きを進められた陰では、三条市地域経営課に勤務する中国系カナダ人のショーン・ワン国際交流員が大きく貢献した。
国定勇人市長は「わたしどもから三条市医師会の皆さんに支援物資を贈呈し、しっかり活用させていただきたい」と感謝。殷副総領事官は「感染が中国で拡大したとき三条市はすぐさま巴南区に援助の手を差し延べてくれた。今、感染が日本で拡大しているとき巴南区が恩を返し、また医療物資を贈った。2つの友好都市がともに助け合う姿が助け合う姿は非常に感動的」と孫大剛総領事のあいさつを代読した。
また、三条市医師会の水野春芳会長は、マスクや消毒用アルコールが不足し、防護服も注文してもいつ納品されるかわからず、県央応急診療所でようやく備蓄できているが、一般の外来はまったく入手できないと状況を話した。
そのなかで「発熱の患者をみるのは非常にストレスだったが、全員にこの物資を使うわけにはいかないが、濃厚接触歴があるとか、感染が疑われる症例例に対して有効に使わせていただける」、「まずは発熱をみてくれている病院、診療所に必要な数のアンケートを近日中にとり、それに応じて枚数の配布を考え、応急診療所にも配布していきたい」と話した。