ことしは6月6日、7日と行われる予定だった新潟県三条市の名物行事、三条凧合戦(いかがっせん)は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために中止になった。合戦を主催する三条凧協会(須藤謙一会長)は5月16日、合戦中止の悔しさと1日も早い感染症終息の願いを込めて鍾馗(しょうき)を描いた六角凧を三条の空に揚げた。
三条凧合戦は毎年6月の第1土、日曜に開かれ、約20の凧組が優勝を争って合戦を繰り広げる。資料に残る中止は1978年(昭和53)以来42年ぶりとなった。
三条凧合戦に使われる凧を製作している三条凧協会会長で須藤凧屋の須藤謙一さん(52)が五十枚張(2850×2120mm)の六角巻き凧に鍾馗を描いた。鍾馗は中国の民間伝承に伝わる道教系の神で、日本では魔除けや疫病除けに効果があるとされた。そもそも凧は、古くは魔物や病気を追い払う厄払いの道具とされた。
凧絵は武将などの顔が大きく描かれることが多く、須藤さんも鍾馗の顔を描いたことあるが今回は初めて鍾馗が邪鬼退治をする全身像を描き、「疫病退散」と大書した。
凧協会の会員6人が参加し、凧揚げを前に三条市・八幡宮(藤崎康彦宮司)で神事を行ってから合戦会場にしている三条防災ステーションで揚げた。曇り空だったがちょうどいい風が吹いた。揚げ師の手にかかるとすぐに空へ舞い上がり、近くで凧を揚げていた子どもたちも凧糸を引かせてもらって喜んでいた。
ことしの秋にも大会があり、来年10月には「日本の凧の会」のイベントが三条市で開催される。須藤さんは「そういった準備も並行して来年の合戦に向けて準備を進めていきたい」と話した。このあと鍾馗の凧は三条市とも相談して市民の目にふれるような場所に展示したい考えだ。