新潟県・長岡市栃尾美術館の25周年記念展として日本美術刀剣保存協会長岡支部(佐藤元彦会長・会員45人)の会員愛刀展「日本刀の美 IV」が新型コロナウイルスの影響で7月26日(日)まで会期を延長して開かれている。
4月25日から6月28日までの開催予定だったが、感染拡大防止のため、栃尾美術館は4月25日から5月20日まで臨時休館した。21日に再開し、同時に愛刀展が開幕したが、2カ月の予定だった会期が1カ月間となってしまうため、会期を予定より1カ月延長した。
日本美術刀剣保存協会長岡支部は毎年、栃尾美術館で愛刀展を開き、会員が所有する刀剣を展示している。5年に1度、規模を大きくして開き、ことしはその大規模展の年。展示室Iに鎌倉初期から明治までの33振り、展示室IIに11振りの合わせて44振りの刀、短刀、脇指、太刀、やりなどをはじめ、こしらえ、鉄砲、具足、刀装具、日本刀製作工程見本など105点を展示している。
展示室Iで、とくに著名な刀工の古い刀は、室町時代末期の「二代目村正(むらまさ)」の刀。江戸時代には徳川家を斬った不吉な刀として廃棄されたり銘をつぶされたりしたものが多いが、展示しているのは、はっきり二字銘を残した決められた長さの定寸の貴重な刀だ。
幕末の名工として知られる三条出身の栗原信秀(1815-80)の刀が、それぞれ文久元年(1861)、明治9年(1876年)と刻まれた2振りある。
庄内藩酒井家のお抱え力士「朝日嶽鶴之助」の所持刀として伝わる清心斎盛近(せいしんさいもりちか)作の重量1,170gもある大きな刀。刀のさやなどに金、赤銅、素銅の3種類それぞれの金属でつくった徳川家の三つ葉葵紋を飾ったもの。今の長岡市にあった与板藩、井伊家の家中で使われたという色鮮やか朱漆塗りの具足などがある。
展示室IIには、三条市の田斎のみ製作所の田斎道生さんが2013年春に打った短刀がある。銘は表に「伊久礼住 行道作」と刻む。その短刀の上には田斎さんの師、東京の吉川三男さん作の短刀を並べて展示している。
ほかにも軍刀をどのように装着していたかをマネキンを使って展示。河井継之助の軸。刀剣外装の柄下に使われた高価な装飾素材の飾鮫(かざりざめ)。大正天皇の即位の礼にあわせて製作されたとされる御大典太刀拵(ごたいてんたちこしらえ)。新発田市の月岡温泉で作刀した人間国宝だった天田昭次(あまたあきつぐ・1937-2013)の最後の作品と思われる短刀もあり、いろいろな視点から刀剣の鑑賞を楽しめる。
日本美術刀剣保存協会長岡支部は、三条市から上越市の愛刀家が会員。支部長の佐藤元彦さん(68)=長岡市=は愛刀家歴40年以上になる。「見どころは満載。光り物だけでなく、ほかの刀剣の展示会より色をつけた」と佐藤さん。「刀剣のおもしろさを知ってほしいので、それ以外の要素を盛り込み、いろんな角度からファンを取り込めるようにした。展示してるもののなかから、ひとつでも記憶にとどめてもらえれば」と願っている。
感染防止のため作品解説会は中止したが、土、日曜はできるだけ佐藤さんをはじめ会員が会場に詰めて来場者に作品の解説をしたい考えだ。月曜は休館日で、開館時間は午前9時から午後5時まで。観覧料は一般400円、高・大学生200円、中学生以下は無料。問い合わせは長岡市栃尾美術館(電話:0258-53-6300)。