民間検査・研究機関の一般社団法人県央研究所(茨木和雄理事長・新潟県燕市小高)は22日、新型コロナウイルスのPCR検査を受託開始したと発表した。新潟県内で民間検査機関が新型コロナウイルスのPCR検査を行うのは初めて。
県央研究所で行うPCR検査は、鼻の奥をぬぐって採る検体ではなく、唾液(だえき)を検体とする検査キットを使う。前処理を含めて約1時間で検査結果が出る。
行政検査のPCR検査の料金は公定価格1万8千円で、保険適用により3割の患者の自己負担分は公費で補助するので、無料になる。自前で検査結果を判定できる病院は1万3,500円となる。
県央研究所は5台のPCR検査装置を保有している。そのうち1台を1日1回だけ新型コロナウイルスの検査に充てることにし、1日最大94件の検体を検査できる。
PCR検査は新型コロナウイルス専用の検査装置ではなく、DNAサンプルを増幅して検査する技術。検査機関では珍しいものではなく、県央研究所では十数年前からノロウイルスや検便、O157、サルモネラ菌などの検査で幅広く活用している。検査装置は技術革新やによる時間短縮や精度の向上が著しく、新型コロナウイルスの感染拡大と関係なく、ことし1月に5台目の検査装置を発注し、3月16日に設置された。
感染拡大防止のため4月7日に緊急事態宣言が出され、県をまたぐ往来の自粛が求められるなか、県央研究所でも外回りの職員の県外出張を自粛していた。緊急事態宣言が解除され、6月に入ってから県外出張を再開したが、研究所での感染拡大を防ぐため、出張から帰った職員は、経過観察を兼ねて2週間は近くに借りた建物で2週間、勤務する対策を講じている。
同時に検査機関として新型コロナウイルスに感染した職員が取引先などに感染を広げることがあってはならないと、県外出張の再開と同時に職員の陰性確認のPCR検査を行うようになった。同時に新型コロナウイルスのPCR検査を受託する準備を進め、受け入れ体制が整った。
PCR検査の実施の決断は簡単ではなかった。国内で新型コロナウイルスの感染が広がり始めたころから、民間企業から感染を拡大させないためにPCR検査ができないかという要望があった。病院から院内感染を防ぐために手術前に患者のPCR検査を行いたい、老人ホームからは新規入所者のPCR検査をといった要望があった。PCR検査の陰性確認を携帯して社員の出張を行っている民間企業もある。厚労省からも感染拡大に備えてPCR検査への対応が求められていた。
所内では、感染が広がる心配や、PCR検査を行うことによる風評被害のリスクがあった。当初は新型コロナウイルスの感染に対する恐怖感から所内でも動揺が広がった。
すでに全国では数多くの民間検査機関がPCR検査を始めている。「皆さんが困っているときに何もやらないわけにはいかない」と茨木理事長。「地域のためにいつでも貢献できるのがわれわれの使命だ」とできる限り要望に応えていく考えだ。問い合わせは県央研究所(0256-46-8311)へ。