大規模改修の必要性から新潟県加茂市・加茂文化会館は、来年3月でいったん休館する。その加茂文化会館を会場に毎年、バレエ公演を開催しているNPO法人「県央地域に舞台芸術を育む会」(小林裕之理事長)は、加茂文化会館の存続を願って9月末までに1万人を目標に署名活動を展開している。
加茂文化会館は1982年にオープンしてから38年になる。建物の耐震強度は満たしているが、大ホールの吊り天井は、吊りの長さ現在の耐震基準より長過ぎて、基準を満たしてない。
さらに空調設備や照明、音響装置もこれまでほとんどメンテナンスをしてこなかった。そのうちに補修部品もなくなり、細かいところでは高置水槽へ水を上げるポンプも異音が発生するため、公演中は作動できないなど、至るところで不具合が発生している。
建設費用は約17億円だったが、全面改修にはそれと同じ約17億円、圧縮すれば10億円以下に抑えられるとも見られるが、財政難の加茂市にはその費用をひねり出すのは厳しい。加茂市では利用予約が入っている今年度中は開館するが、来年度からひとまず休館して改修か廃止か、あるいは建て替えか、運営主体の変更かなどを検討していくが、いずれにしろ財政健全化を進める加茂市にとっては新たに大きな負担がのしかかる。
廃止の可能性も高まるなかで、県央地域に舞台芸術を育む会が存続を求めてのろしを上げた。6月中旬、存続を願うネット署名をスタートした。当初は7月に入ってからの予定で、やや勇み足なスタートとなったが、紙面で署名したいという要望もあって署名用紙もダウンロードできるようにし、まだ積極的な告知を行っていないにもかかわらず、29日までに360人の署名を集めた。
県央地域に舞台芸術を育む会は、加茂文化会館の大ホールを会場に本格的なバレエ公演をこれまで8年連続で実現し、多くの来場者を集めた。大ホールは客席前部に県内でもまれなオーケストラピットを備える。オーケストラピットは可動式でオペラやバレエの公演のときは下げて中でオーケストラが演奏する。加茂文化会館はバレエ公演には掛け替えのない存在だ。
署名サイトでは、「産業面では新潟県において最も活力があり存在感を示す県央地域ですが、このままでは芸術文化面では空白地帯になってしまいます。私たちは加茂文化会館を適切な維持補修し、継続使用ができますように強く要望いたします」と書いている。
小林理事長は「このままでは存続できないと思っている人も多い。ほかの団体にも声をかけて活動に加わってもらうとともに、趣旨に賛同いただける人に署名に協力してほしい」と願っている。