新型コロナウイルスの感染防止のため、ことしの夏は全国で花火大会が軒並み中止になるなか、新潟県加茂市の創建727年になる式内社、青海神社(古川洸宮司)は、8月31日、9月1日の2日間、ことしも秋季例大祭の花火を打ち上げることを決めた。感染防止で「おうちで花火」で花火見物を呼びかける。
7月2日開かれた青海神社氏子会議で議論し、賛否両論があったが開催を決めた。感染終息を願って6月1日、「Cheer up! 花火プロジェクト」として全国163の花火業者がいっせいに花火を打ち上げた。地元加茂市で花火を製造する阿部煙火工業も40発の花火を打ち上げた。その花火を見物した人から「花火はいいものだ」、「やっぱりやった方がいい」という声があったと言う。
秋季例大祭では宵宮の31日午後8時半から宵宮祭、1日午前10時半から大祭の神事を行う。青海神社は加茂山中腹に建ち、その裏手で2日間とも午後8時から奉納花火を打ち上げる。奉納花火は例年、2日間で約230発になる。
花火を奉納するのは、氏子や地元企業。新型コロナウイルスの影響で経営が悪化している企業が多く、打ち上げ数が減ると予想される。青海神社より下の加茂山公園池之端では仕掛け花火を恒例にしているが、密集が予想されるため中止する。
もともと観覧場所を設けないので、これまで花火見物で密集は発生していない。密集が心配される露店の出店は中止。できるだけ自宅付近で見物する「おうちで花火」を呼びかけ、境内に大勢の人が集まるようなら制限することも考えている。
花火大会はそもそも飢饉(ききん)の慰霊や疫病退散の祈願を目的に始まったとされる。花火見物で感染が広がっては元も子もないが、疫病退散のために今こそ花火大会を開くときとも言える。阿部煙火工業を支援したいという思いもある。
青海神社権禰宜のの古川修さん(42)は、「奉納花火なので氏子から見てもらうのが本義」と言う。加茂青年会議所OBでもあり、いつも頭のなかに加茂のまちづくりがある古川さん。「花火を楽しみに待っている子どもたちがいる。こんなご時世だからこそ疫病退散とあすへの活力を感じてもらえらば」と花火が少しでも市民の心を奮い立たせることにつながればと願っている。