新型コロナウイルスの感染が急速に拡大している東京都をはじめ都市圏との往来の自粛が要請されるなか、新潟県燕市の燕商工会議所は、唾液(だえき)PCR検査の遠隔利用による陰性確認で安心して燕市の企業へ来訪してもらえるよう、自主ガイドラインの策定を進めている。
自主ガイドライン案では県内で唯一、PCR検査を行っている民間検査機関、一般社団法人県央研究所(燕市小高)の唾液を使ったPCR検査を利用してもらう。まず県央研究所に検査キットを送付してもらい、検査依頼書と唾液を入れた検体を受け入れ先へ送る。
受け入れ先の人は到着した検体を速やかに県央研究所へ届け、判定結果をメールで受け取り、陰性の判定なら事前調査書に記入して来訪先に伝える。陽性なら本人から帰国者・接触者相談センターへ連絡して指示を仰ぎ、あらためて正式な検査を受ける。
来訪者にとっては、検体を送付することで燕市を訪れる前にPCR検査の結果を確認でき、受け入れ側にとっても水際対策となり、両者にメリットがある。検査料金は税込み1万4850円。
自主ガイドラインの策定を思いついたのは、公益社団法人つばめいとの代表理事の会社社長、山後春信さん(60)。燕市の産業界では、新型コロナウイルス感染防止のため、遠方からの来客の受け入れに頭を悩ませている。
つばめいとが受託運営する燕市にあるインターンシップ生の宿泊施設「つばめ産学協創スクエア」でも国内で感染が拡大した春先から利用はほぼゼロ。感染リスクを避けて燕市へ来訪してもらえる方法はないかと考えるなかで、6月に県央研究所がPCR検査を開始した。鼻腔で咽頭拭い液で検体を採取するのが一般的だが、県央研究所では最近になって増えている唾液が検体で自分で採取できることから、燕市へ来る前に検査する遠隔利用を思いついた。
8月4日の燕商工会議所工業部会、5日正副会頭会議で承認を得て正式な制定を予定。山後さんは「皆さん来訪に苦労している。費用はかかるが唾液PCR検査で陰性を確認して安心して燕市へ来てほしい」と話している。
燕市は30日、燕市から県外出張や教育実習生の来訪のためのPCR検査の費用を補助する、県内初のPCR検査費用の公費補助を発表。さらに自主ガイドラインの策定により、燕市のPCR検査を利用した移動に伴う感染防止対策は、県央研究所を車軸に官民両輪で大きく前進する。