仔犬(こいぬ)印で知られるプロ用調理道具を製造する新潟県燕市の株式会社本間製作所(本間一成代表取締役・燕市秋葉町3)は、来年で創業から70年目を迎えようとしている中で、新たに開発した「メッシュボウル」で初めてクラウドファンディングに挑戦。終了まで3週間あまりを残して1,100人以上から900万円に迫る応援購入を集める成功を収めている。
「フラットエッジ深型ボウルシリーズ」として新たに開発した「メッシュボウル」は、料理研究家の要望を元に徹底的に使い心地にこだわって設計するシリーズだ。クラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」では、直径18cmの「メッシュボウル」と、それにボウルを加えた「ボウル&メッシュボウル」、さらにトレーを加えた「ボウルフルセット」の3パターンで展開する。
メッシュボウルのふちは、フラットなエッジを採用した。ふちは巻いて仕上げるのが一般的だが、内部に水やごみがたまって不衛生になりがち。つばのようにフラットにすることで洗いやすく、水やゴミが溜まりにくい衛生的な機能性を実現した。広くなったふちのおかげで、片手でも持ちやすいというメリットもある。
フラットエッジの恩恵で、繊細に注げて、液キレのいい注ぎ口をボウルにつけることができた。メッシュは丈夫で破れにくく、型崩れしにくい。一般の製品より太い線径0.57mmのワイヤーを採用。プロ仕様の耐久性の良さは手に取った瞬間にわかるほど圧倒的だ。
ボウルの内側は、つや消し後に電解研磨仕上げ。クリームを泡立てるとホイッパーとボウルが擦れてごく微量のステンレスが剥がれてクリームが変色することがあるが、電解研磨で表面を滑らかにすることで、変色を起こりにくくした。
ボウルにメッシュボウルを重ねると、深さの違いでメッシュボウルが浮き上がる。そのふちの間に指を差し込んでメッシュボウルを持ち上げやすい。そればかりか、水に浮きやすい食材を流水にさらしても、メッシュボウルの上に水が到達する前に下のボウルから水があふれ出すので、食材が水と一緒に流れ出ないという大きな長所がある。
その上にトレイを載せれば、振ったりボウルを傾けても食材が流れでないようにするフタとして水切りに使え、水切りした食材を載せてもいい。
クラウドファンディングは7月16日午後1時にスタート。一番人気の「ボウルフルセット」は2セットで25%オフからスタートし、「メッシュボウル」も2個で25%オフからスタート。目標30万円に対して6日までの応援購入総額は3000%近くに達する高い人気を集めている。クラウドファンディングは送料込みだが、その後は税別3,500円での販売を予定している。
「エンドユーザーにタイムリーに商品を届けたかった」と代表取締役の本間一成さん(50)は近年の課題を話す。本間製作所の料理道具は、プロの料理人が使う業務用が中心。しかし商品を発売してから調理の現場に届くまで長くて2年にもなるタイムラグがある。
SNSで自社商品を紹介すると反応があった。以前からあたためていたネットで商品を紹介して販売したいという思いが募っていた。そこへ新型コロナウイルスの流行。「業務用の商品の動きが止まるだろうと考えた」。それがクラウドファンディングへの挑戦で、8月6日には仔犬印の公式通販サイト(https://koinu-original.com/)を起ち上げた。
「感染拡大の影響で逆に迷いなく、ネット対応を進めることができた」と本間さん。ラインナップは約2,000アイテムにのぼるが、卸展開していないコーヒーポットやクリームポット、アイスペールなど、公式通販サイトだけで買える商品をまずは20アイテムほど展開していく。
クラウドファンディングでは「製造したものをきちっと発信していくことができた」と成果に手応えを感じている。次はサイズ違いの直径15cm、21cmの発売を計画している。「リーズナブルな価格を設定し、一般ユーザーにも響きやすいような商品を考案していきたい」と本間さんはオンライン販売の展開の青写真を描いている。