新潟県で骨髄バンクと血液疾患患者、その家族を支援し、骨髄バンク事業の普及啓発活動を行うNPO法人骨髄バンク命のアサガオにいがた(丹後まみこ会長・新潟県加茂市五番町)は8月5日、加茂市の藤田明美市長に骨髄のドナーだけでなく、ドナーを雇用する事業所への支援などを要望した。
骨髄バンク命のアサガオにいがたの立ち上げに尽力した、2005年に急性リンパ性白血のため骨髄移植を受けながら18歳で息子を失った高野豊さん(60)、由美子さん(54)夫婦と、骨髄移植で白血病を乗り越え、2019年から三条市の地域おこし協力隊として新潟県内初の3人制バスケットボールのプロチーム、三条ビーターズで活躍するキャプテン松岡一成さん(30)の3人が加茂市役所を訪問した。
加茂市は2011年、全国で初めて骨髄移植ドナーに休業補償の助成を始めた。それが今では全国705自治体にドナー助成制度が広がっている。最近の助成制度は骨髄ドナーに選ばれた人が出た事業所にも1日1万円を7日分、7万円を助成している。
骨髄バンク命のアサガオにいがたでは、当初から事業所に対する助成制度も要望したかったが、遠慮して骨髄移植ドナーの助成だけを要望したことを説明した。最近は、ドナーと事業所をセットにした助成制度を設ける自治体が多い。加茂市では助成制度を始めてから実際に助成を受けたのは1例しかなく、財政負担は小さい。「事業所の支援があれば事業所も喜んでドナーを送り出してくれる」と訴えた。藤田市長はほかの自治体の事業所に対する助成制度の内容を質問し、事業所助成の検討を「職員に指示する」と約束した。
加茂市で松岡さんのバスケットを通じた小中学校などでの命の授業の開催も要望した。松岡さんは茨城県牛久市出身。2015年に急性骨髄性白血病を発症し、いったんは社会復帰したが再発し、2017年に骨髄移植。バスケットを続けたいと社会人の大会への出場を続け、三条ビーターズに迎えられた。
兄が骨髄バンクで命をつなぎ止めることができたからと、妹が骨髄バンクに登録した。松岡さんも骨髄移植のために貢献できることはないかと考えているなか、2019年5月に開かれた骨髄バンク命のアサガオにいがたの10周年記念事業に参加して入会。ドナー登録の説明員の資格も取って講演活動も行っている。
ドナー登録は55歳まで。55歳を過ぎると登録が抹消されるが、近年は新たに登録する人より抹消される人の方が多く、登録者が減少して問題になっている。幸い、松岡さんの効果でことしは登録が増えていると言う。「少しでも松岡さんの話を聞けば頭の片隅に入れておいてもらえる」、「若い人が子どもたちに話すとインパクトがある」と言い、松岡さんは「こうして活動することがぼくの使命。一度、つまずいても夢はかなえられることを子どもたちに伝えたい」と話し、藤田市長も小中学生に対する講演の開催を快諾した。
また、白血病から再起したアルビレックス新潟の早川史哉選手の写真をデザインしたACジャパン作成の日本骨髄バンクのポスターを加茂市の公共施設への掲示を要望した。