新潟県三条市下田地域で農業のかたわら金蔵加工業を営む藤家貴之氏(41)=三条市駒込=は10月5日、自宅で記者会見して三条市議補選(11月1日告示・8日投開票)に無所属で立候補を表明した。
藤家氏は地元小中学校から三条商業高校へ進み、アップル外語観光カレッジを卒業。下田商工会青年部長、長沢小PTA会長を務めた。2017年から稲作の大規模化を図り、今は約13ヘクタールを作付けする。家族経営の溶接を中心とした金属加工業は経営移譲して代表に就く。スポット溶接を使ったクッキー型作りで注目を集め、燕三条「畑の朝カフェ」を担当するようにもなった。
記者会見で藤家氏は、立候補のいちばんのきっかけは「この地域の未来の姿が想像しにくいと思ったから」と話し、キャッチコピーの「農業の未来考える」、「医療・福祉の未来を考える」、「市民の声を未来に届ける」の3つを重点を掲げた。
これまで地元駒込の有志一同でこの地域を盛り上げようとイベントをし、成功させたが「なかなか地域貢献には至らないと深く感じた」。下田地域でも有数な大きい農家になったと自負するが、これ以上の作付けは藤家氏の個人の問題ではなく、雇用もなかなか生まれない。5年後、10年後を思えば田んぼ、人口減少など切羽詰まった農業問題がある。
農業委員、農林課と自身が農家代表として農業に携われば「ますます、この地域の農業が発展し、継続していけるようになるのかなと思う」。
「医療・福祉の未来を考える」は、過疎化していくこの地域のいちばんの課題。数年前に下田地区の荻堀の渡辺医院が廃業したときは子育て世代が衝撃を受けた。その後、三条しただ郷クリニックが開院したが、「そういった事情をわたしたちが相談できる身近な市議が若い世代にいなかった。それがすごく不安だったので、そういうところにも力を入れたい」。
「市民の声を未来に届ける」は、「不安や不便なことを地元の若い議員が声をすくい上げ、相談してもらい、市議になったら市政に反映できるのではないかと考える」。
「国が地方創生をうたい、独自性が求められるなか、三条市も個性豊かな魅力ある都市づくりが望まれている。市民生活の安心安全、農業、工業、商業の成長、教育や子育て支援、医療体制の充実、蓄積する課題に率先して行動し、誰もが安心して生活でき高齢者や次世代を担う子どもたちが夢と希望のもてるまちづくりを目指し、一生懸命に取り組んでいきたい」と決意を示した。
記者の質問に対して藤家氏は、多くの人がイメージする下田は、奇勝「八木ヶ鼻」、日帰り温泉「いい湯らてい」、道の駅「漢学の里しただ」が連なる国道289号沿い。駒込など沿道でない地域はあまり変化はないと感じる。「289号沿いだけではなく、もっと過疎が進んでいるような地域に目を向けて、下田の発展や魅力、そこに住む人たちの活力になるような市政を築いていきたい」と話した。駒込地域5集落の推薦を得た。
下田地域の市議だった佐藤宗司さんが9月に亡くなったことが直接、立候補の決意につながったわけでなく、下田地域の市議が4人しかいないことで以前から立候補の気持ちがあった。前回市議選に下田地域の熊倉均元市議が立候補しなかったことに驚いたが、当時は農業の拡大に追われて立候補は頭になかった。
単純に担い手不足かもしれないが、コメが余っている状態のなかで農家を増やせといっても矛盾している。しかし作付けしなければ自然が崩れ、田んぼダムの環境が減っていく。下田地域は兼業農家が多いが、自身が農家と金属加工業の両立を実践している。余剰米やコメの単価が下がっている現場のどうにかしたいとは思うが、生産組合をつくっても若い人たちがどこまで意欲的になるかわからない。「もうかる農業に発展していきたいと考えているが、なかなか答えが出ないのでそれはこれからだと思う」と難しさを話した。