コロナ禍で鈍っている客足をひな人形で取り戻せたらと、創業180年になる老舗料亭「割烹山重」(霜出典良代表取締役・新潟県加茂市仲町)は、「ひな祭り」にあわせて古くは明治時代の製作と思われる5組のひな人形を展示。3月7日まで「大人のひな祭り」と銘打った期間限定のランチとテイクアウトを提供している。
店には大正時代から伝わるひな人形があるが、これまで仕事の忙しさもあって飾る時間がなく、何十年もたっていた。ことしは感染症拡大の影響で来客が少なく、季節の行事や店内装飾を見直す機会が増えた。若おかみの霜出朋子さん(51) は「久しぶりにおひなさまを飾ってみよう」と思い立った。
仲町通店に古くから店にある3組、知り合いから譲り受けた2組の計5組のひな人形を飾った。古くから店にあるのは、霜出さんが小学生になってから自分で選んで買ってもらった当時としては珍しいと思われる木目込み人形の五段飾り、霜出さんが生まれたときにはすでに店にあった大正時代と思われる三段飾りと昭和初期の親王飾り。
知り合いから譲り受けたのは、それぞれ昭和初期と明治の終わりごろと思われる親王飾り。明治の終わりごろの親王びなは店頭のショーウインドーに入れ、失われた男びなの刀、女びなの扇を新たに買い足して飾っている。古いものは現代のひな人形とは顔つきが異なり、女びなは昔の方が冠の装飾が巧みで、ひな人形の流行の変遷を感じることができる。
「今までは男びなと女びなくらいしか飾らす、片付けてあったおひなさまを一度に出すことは今までなかった。コロナ禍でお客さんの入りが悪く、時間もあったので全部、出してみようと思った」と霜出さん。ひな人形に興味をもって来店する若い女性もいると言い、「おかげで風通しもできました」とコロナ禍を逆手に取っている。
ひな人形の展示にあわせて隣接する「ヤマカフェ」では、「ひな膳ランチ」(税込み3,300円)を予約制で1日限定10食を販売。テイクアウトで「ひな会席折」(同2,200円)。月曜定休、問い合わせは山重(0256-52-0104)へ。