24日行われた東京五輪の柔道女子48kg級で、新潟県三条市で合宿したコソボ柔道選手団のディストリア・クラスニチ選手(45)が優勝。この東京五輪でコソボ初の金メダルをもたらした。
ディストリア・クラスニチ選手は、このクラスで世界ランキング1位の実力者。シードで3回戦から出場した。3回戦では、ブラジルのガブリエラ・チバナ選手(27)に大外落で一本勝ちし、続く準々決勝で中国の林真豪選手(23)に大外刈で一本勝ちした。
準決勝ではモンゴルのウランツェツェグ・ムンフバト選手(31)に大外刈りの技ありで勝利し、決勝で日本の渡名喜風南選手(25)と対戦。終了20秒前に内股で技ありを決めて勝ち、優勝した。コソボ五輪委員会は、クラスニチ選手の対戦や金メダル獲得をSNSなどで投稿している。
コソボ柔道選手団は選手5人をはじめ7人で編成。ホストタウンとなった三条市で16日から21日まで東京五輪に向けた事前合宿を行った。2年前にも三条市で事前合宿している。
日本よりもコソボの選手を応援すると明言していたのは、三条市の滝沢亮市長。県立三条高校で柔道部だった。「柔道着を着てテレビの前で正座して観戦した」。試合の分析も専門的で具体的だ。
初戦の3回戦と準決勝をテレビやネット配信で観戦できた。「初戦から絶好調に見えた。決勝まで行くと初戦でわかった」。滝沢市長によるとトーナメントの組み合わせはクラスニチ選手と反対側のブロックが激戦で、組み合わせの運もあったと言う。
準決勝で難敵と見られた長身のウクライナのダリア・ビロディド選手(20)が、渡名喜選手と対戦した組み合わせが味方した一方、これに勝った渡名喜風南選手の勢いが心配だったとも。
しかし決勝ではクラスニチ選手が危なげない戦いをしたと見る。同じコソボのマイリンダ・ケルメンディ選手(30)は、前回五輪の女子52kg級で金メダルに輝いた。クラスニチ選手も同じ階級だったが、ケルメンディ選手とかぶるため、減量して1階級下の48kg級に移った。
三条市でも一緒に事前合宿した。「4年前から金メダリストと練習する環境は最高だったと思う。精神的にもケルメンディ選手は、チームの支柱だった。クラスニチ選手はランキング1位に恥ずかしくない試合だった」。事前合宿のセレモニーでは、コソボの選手に投げられてみたいと話したが、「ますます投げられたい気持ちになった」と笑った。
一緒に観戦した両親からはなぜコソボを応援しているとかと聞かれたが、理由を話すと市長のうちは仕方ないと言われた。
コソボ柔道選手団のトップを切って試合にのぞんだクラスニチ選手の金メダルに「率直にうれしい。選手はその何千倍もうれしいことでしょう。コソボの大統領も会場に来ていた。コソボの選手が勝って日本一ヒールのまちとなるのは甘受する」と話した。
三条市ホストタウン実行委員会の梨本次郎実行委員長は「決勝のクラスニチ選手は冷静沈着だった。最後まで崩れることがなかった。減量のせいもあるのか、これまでクラスニチ選手のつらそうな姿しか見ていなかったが、試合では顔つきが別人のように輝き、オーラがあった。渡名喜選手とビロディド選手の準決勝が事実上の決勝と言われれたりしてクラスニチ選手はあまり注目されなかったかもしれないが、勝つべくして勝ったと思う」と述べた。
また、梨本実行委員長はコソボのアルバ・メフメティ臨時代理大使に「金メダルおめでとうございます!」とメッセージを送信すると、「Thank you my friend You have helped us a lot」と返信があったと感激していた。
25日は前回五輪でコソボ選手として初めての金メダルを獲得したコソボの英雄、ケルメンディ選手が52kg級に出場する。