24日開幕の東京パラリンピック聖火の集火・出立式が16日、新潟市で行われて県内30市町村で採火された火が集まった。三条市では17日、三条鍛冶道場で採火式が行われ、三条伝統の古式にのっとった鍛冶の技で採火した。
三条市・神明宮の神楽を神楽を守る神明宮神楽保存会が「宝剣作の舞」を披露したあと、三条鍛冶道場で鍛冶作業の体験の指導にあたる越後三条鍛冶集団が火起こしを行った。
宝剣作の舞は、神の力を借りて剣を完成させる約1時間の演目を20分ほどに短縮して舞った。火起こしを行ったのは包丁を製造する飯塚正行さん(50)=三条市南四日町2=。鉄の棒の先端を金づちでたたくと熱くなって赤みを帯び、それをもぐさと麻のひもに着けて発火させた。息を吹きかけるともくもくと煙が上がり、まもなく一気に赤い炎が立ち上がると大きな拍手がわいた。
その火を滝沢亮市長の点火棒に移し、さらにその火を全国障害者スポーツ大会にフライングディスクとボウリングの種目で2年連続出場している刈屋祐誠(かりや たくま)さん(34)が持つランタンに移した。このあと刈屋さんは新潟市で行われた集火・出立式に三条市代表として出席し、ランタンの火を届けた。
飯塚さんが行った技は、飯塚さんが鍛冶の道に入ったころに先輩の刀鍛冶が正月2日に行っていた火入れ式で行っていたものを再現した。神聖なその火で打ったかま、剣、かぎを順に左から並べて柱に打ち付け、火よけなどにしたと言う。
飯塚さんはこの技を見たことしかなかったが、採火の大役を頼まれてから再現しようと考えた。冬から情報を集めて繰り返し練習。もぐさと麻ひもで発火させる方法を独自に体得した。
飯塚さんは「なかなか火にならず、ようやく成功率は8割になった。うまくいってよかった」とほっとした表情だった。