2年前に新潟県三条市下田地区に開院した「三条しただ郷クリニック」は、運営を個人から法人に変えて1日、「ウェルビー訪問看護ステーション」と「ウェルビー訪問リハビリステーション」を開設した。
2016年1月に三条市荻堀にあった渡辺医院が閉院し、下田地区で最も人口が集中する荻堀地区の無医地区状態を解消しようと、三条市が下田地区で診療所を運営してくれる医師を募集した。
手をあげたのが、それまで一橋病院(東京都小平市)で訪問診療、総合診療、救急診療に取り組んでいた医師、池上敬一さん(66)。19年7月1日、三条市下田保健センター内に「三条しただ郷クリニック」を開院した。
個人経営だったが、ことし8月6日に医療法人社団陽心会を設立して理事長に就任。陽心会として「ウェルビー訪問看護ステーション」と「ウェルビー訪問リハビリステーション」を設立、運営している。
スタッフは6人体制。ウェルビー訪問看護ステーションは、住み慣れた自宅へ看護師が訪問をして、体調の確認や必要な処置を提供する。家族のように療養生活の手伝いや病院の看護師のように点滴や人工呼吸器の管理も行う。
新型コロナウイルスで重症になった人でも十分な感性予防対策を講じながら訪問できる。できるだけ救急車を呼ばない訪問看護は実現する。
ウェルビー訪問リハビリステーションは、介護保険を利用したサービス。病院で行うように1対1で住み慣れた自宅でリハビリを行うため、より困りごとに対応したリハビリが提供できる。本人や家族がしたい、やりたいことを支援し、本人の苦痛緩和や動作訓練に取り組み、家族への支援も行う。
ケアマネージャーや訪問介護、デイサービスの職員とも情報を共有し、利用者や家族がより安心して生活できるよう支援する。三条しただ郷クリニックの受診者は池上医師がリハビリを指示し、その後にケアケアマネージャーと相談し、ケアプランに位置づけてもらうことでサービスが開始できる。
いずれも「あんしんカード」をスタッフ、利用者と主介護者、ケアマネージャー、主治医などで共有する。病状、連絡網、観察、安全信号機、心配、相談、対応の7つのカードで情報共有し、観察カードは、目の開け方、顔色、息づかいなどの項目をいつもと同じか、あるいは変わっているかを判断することで病状の悪化や違う病気が起きている兆候を知ることができる。
在宅医療は16km以上離れた地域への往診の保険診療の実施は原則、禁止されている。対象地域は三条市全域だけでなく、16km以内の加茂市、燕市、田上町、見附市、長岡市、新潟市南区なども対象になる。
池上さんが開院前、三条市に対して行ったプレゼンテーションで、すでに2年後に訪問看護ステーションと訪問リハビリステーションの開設するプランを示していた。2年後としたのは、医療法人設立に2年間の実績が必要だったため。タイムテーブル通りに進んでいるに過ぎない。
開院を前に8月28日に開いた説明会には地域のケアマネージャーや市職員のほか、一般市民数人も含め28人が出席した。そのなかで池上さんは、「陽心会」の名称が太陽の「陽」に「心」と書くのは、ポジティブ心理学からきていると説明した。
病気の原因を過去の行動に原因を求めるのではなく、「ポジティブ心理学は過去には目をつぶる。そんなことはどうでもいいじゃないかと」、「明日からちゃんと生きるためにはどうしたらいいかを考え、過去をあまり責めない。まったく責めない。明日からどうするっていうのが問題」で、「どう生き、元気に過ごしましょうかというのが陽心館。ウェルビーというのはウェルビーイング、いつも自分でいるということ」と名称に込めた思いを話した。
「要はこの下田中が全部病院だとして、みんな自宅は個室だとみなす。皆さんは家にいるけど、病院に入院してる体制になるんだというのが基本的なコンセプト」。さらに「病院に行くと良い患者を演じなければならない。それは大変だから、なるべく自分の家にいて、わがままな方がいいということ」と考え方を話した。
説明会後は来年の今ごろにはサテライトを開設したいとも話していた。営業時間は月曜から金曜の午前9時から午後6時まで。問い合わせなどは三条しただ郷来ニック(電話:0256-46-8717)、ウェルビー訪問看護ステーション(電話:0256-47-1970・FAX:0256-47-1985)、ウェルビー訪問リハビリステーション(電話:0256-47-1975・FAX:0256-47-1985)。