東京五輪の競泳男子400メートルメドレーリレーなどに出場した新潟医療福祉大学(新潟市北区)の職員、水沼尚輝(みずぬま・なおき)選手(24)が27日、弥彦村立弥彦中学校で講演して子どもたちにエールを送った。
水沼選手は栃木県真岡市出身。小学校1年生で水絵を始め、栃木県宇都宮市の作新学院高校を卒業後、新潟医療福祉大に進学し、卒業して職員になった。
東京五輪では男子100メートルバタフライでは決勝に進めなかったが、男子400メートルメドレーリレーの決勝ではバタフライを泳ぎ、3分29秒91の日本新記録で6位入賞を飾った。講演の前日26日には新潟市スポーツ大賞を贈られている。
講演には弥彦中全生徒に加え、小中連携一貫教育を進めていることから弥彦小学校の6年生も参加した。
水沼選手は東京五輪の日本代表選手団の公式グッズであるオレンジ色のポディウムジャケットを着て登場。対談形式でこれまでの水泳人生を振り返り、五輪のレースの動画を上映し、入賞の賞状を披露したほか、水沼選手がトレーニングを実演して生徒にも挑戦してもらった。
生徒からの質問にも答えた。次々と質問の手が上がった。「五輪に出るときにいちばん支えになるものは?」の質問に「そこに至るまで努力してきた自分自身を信じることがいちばんの支えだった」。
「緊張しているときに心を落ち着かせる方法は?」に「大好きな音楽を聞いて深呼吸すること。そのとき聞いて曲はボン・ジョヴィでした」。「壁にぶつかったときに大切な気持ちは?」に「小さな失敗を積み重ねていることでしか、大きな山の成功は成し遂げることができない。むしろ小さな失敗だとか、壁に当たったときはむしろ楽しむようにしている。ウエルカム精神で壁に挑んでいる」と、どんな質問にも率直に誠実に答えた。
最後に水沼選手は、ラグビーの五郎丸歩選手の監督のエピソードを紹介。監督が五郎丸選手に未来を変えられるかと聞き、五郎丸選手が未来は変えられると答えると監督は「ばか野郎!。変えなきゃいけないのは今だ。今、その瞬間を変えなければ未来は変わんねーぞ」と言った。
「ぼくはこの言葉に非常に感銘を受けた。確かに未来は変えられるかもしれないけれども、今の自分自身が変わらなければ未来は絶対、変わらないと思った」と言い、「これからいろいろ挫折を経験するかもしれないが、今というその瞬間を集中して全力で頑張ってくれればなと思う」と締めくくった。
講演の途中、水沼選手は水をこぼして賞状にかけてしまうと大きな声を上げたり、五郎丸選手と監督のエピソードも落語のようにふたりを演じるように話し、気さくで親しみやすく、生徒児童も集中して講演に耳を傾けていた。
今回の講演を実現させたきっかけは、弥彦中の河井昌之校長。水泳に親しみ、新潟医療福祉大の水泳部の監督と旧知の仲であることから水沼選手の講演を依頼した。河井校長は「水沼選手はこれまで有名な選手ではなかったが、努力して五輪選手にまでなった。粘り強く努力することを生徒に伝えたかった」と話していた。