「文化財防火デー」の1月26日、県指定有形文化財「木造阿弥陀如来立像」を所有する三条市上保内、長泉寺(石塚祐堂住職)で火災を想定した避難や放水の防災訓練が行われた。
「文化財防火デー」は、1949年(昭和24)のこの日に法隆寺金堂の壁画が焼損したのを契機に55年(昭和30)、文化財を火災や震災などの災害から守り、文化財愛護思想の高揚を図ろうと制定され、この日にあわせて各地で文化財を対象にした防災訓練が行われている。
三条市でも昨年は新型コロナウイルスの感染防止のため中止したが毎年、市内の文化財で防災訓練を行っている。これまで文化財のある三条市歴史民俗産業資料館や丸井今井邸、来迎寺、八幡宮などで行われたが、長泉寺は今回が初めて。
長泉寺の阿弥陀如来立像は平安時代後期の仏像で県内の阿弥陀仏の古像の良作で、市内にある10件の県指定文化財のひとつ。1956年(昭和31)に県指定有形文化財に指定され、75年(昭和50)に本堂向かって左に耐火構造の収蔵庫に保存されている。春秋の彼岸に開帳し、事前に申し込めば拝観できるほか、展覧会などに貸し出したこともある。
防災訓練は檀家や近所の10人余りも参加した。本堂で出火を想定し、石塚住職が初期消火にあたる一方、寺に居合わせた客を避難させ、重要品を持ちだしたあと、三条市消防本部のタンク車で本堂と収蔵庫に向かって放水した。そのあと水消火器を使った初期消火訓練も行った。
昨年11月、12月と佐渡市では寺社で火災が相次いで発生して文化財が被害を受けている。ことし1月には文化財に被害はなかったが、長岡市寺泊の神社の火災で2人が死亡した。
長泉寺は1537年(天文6年)の創建で、本堂は1775年(安永4年)ごろの建物と見られる。これまで火災に遭ったという記録はないが、石塚祐堂住職(50)は「こういう形の訓練はまったく初めて。思ったように動けないということが訓練をやってみてわかった。意外とその場になるとできないと思い、何よりいい経験になりました」と訓練とはいえ火災発生時の対応の難しさを痛感していた。
訓練のあと参加してくれた人のためにも収蔵庫の扉を開いて木造阿弥陀如来立像をお披露目した。