国内で初めて近代的な皆既日食の観測が行われた天体観測の聖地、新潟県三条市で1日、移動式としては国内初とされるデジタル式と光学式の両方を備えたプラネタリムがお披露目された。
三条信用金庫(西潟精一理事長・本部:新潟県三条市旭町2)が創立120周年記念事業として昨年3月、三条市に7月オープンの三条市図書館等複合施設「まちやま」の移動式プラネタリウムの購入費として1,000万円を寄付した。
プラネタリムは、送風して膨らませる直径8メートルの半円球のエアドームの中に投影機を設置する。定員はおとな60人、子ども80人だが、新型コロナウイルス感染防止のため、しばらくは定員の半分で運用する。
移動式のプラネタリムはデジタル式が一般的で、光学式と両方の投影機を使ったプラネタリウムは国内では据え付け型しかなく、移動できるのは初めてと言う。
デジタル式はプロジェクターのように接続したパソコンの画像を投影。音声解説も流れる18の番組を購入した。光学式は100万個もの星を高精細に映し出し、天の川のひとつひとつの星まで描写する。今のところは基本的にデジタル式と光学式は連携せずに切り替えて使う。
加えて著名なプラネタリウムクリエーターの大平貴之氏が開発しており、子どもだけでなく天文家も注目するプラネタリムだ。
市内の小学校3年生から中学校3年生までが利用し、とくに授業の単元に天文がある中学校3年生は、11月終わりから12月初めまでに全員がプラネタリウム鑑賞する。
1日は三条市総合福祉センターでお披露目会が開かれ、さっそく関係者がプラネタリウム鑑賞。プラネタリウムの星々の美しさはもちろん、「まちやま」の建設地で撮影した全天球カメラで360度パノラマ撮影した画像と合成した星空の再現に目を見張った。
三条信用金庫の白倉徳幸専務理事は「中でプラネタリムを拝見して童心に返るような思いで、子どもたちも学習の教材と言うことだが、おとなにも見せていただく機会を設けていただければ」と話した。
滝沢亮市長は、「わたしが感じたわくわく、楽しみを1日でも早く三条の子どもたちに味わってもらいたい、体験してもらいたい」「まちやまの目玉のひとつなので子どもたち、市民の多くの皆さま、ゆくゆくは全県、全国の皆さまにこの場所に足を運んで体験してほしい」と期待した。
三条市では1887年(明治20)に大崎山(正式名称:永明寺山)で日本初の皆既日食の科学的観測に成功。大崎山頂上公園にはそれを記念した観測日食碑が建ち、記念すべき地として2020年に日本天文学会の第2回天文遺産に認定されている。
また、その縁で三条市は1987年(昭和62)に日本宝くじ協会から移動天文車を寄贈された。2007年(平成19)に開館した三条市矢田の日帰り温泉施設「森の湯小屋 さぎの湯 しらさぎ荘」には天体観測室が設置されており、三条市は天文マニアになじみのある場所だ。