「節分」の3日、三条市・法華宗総本山「本成寺」(門谷日悠貫首)で日本三大鬼踊りのひとつも言われる鬼踊りが2年ぶりに行われた。拝観者を大幅に制限したためにぎわいは薄れたが、腰をすえてじっくりと見物する迫力満点の鬼踊りは本堂に伝統芸能のような空間を生み出した。
毎年、節分大祈願会の法要とあわせて行われており、数万人の人出でにぎわう。ことしも本堂で午前11時から地場産業振興祈願と事業繁栄、午後2時から所願成就祈願と厄年、祝年、お祓いに続いて2回、鬼踊りが行われた。
新型コロナウイルスの感染防止のため昨年は中止したが、ことしは感染対策を徹底して2年ぶりに行った。いちばん大きな変更は参拝者を制限したことで、例年、数万人もの人出があり、一般拝観も本堂に入り、入り切らない人が境内にあふれるが、ことしは一般拝観をなくした。
午前11時からの1回目は来賓や祈願申し込み者などに200人ほどが参拝した。いつもは法要を営む僧りょと一緒に内陣に陣取るが、ことしは外陣の一般拝観がないので、外陣に用意したいすに座り、内陣は僧りょだけで法要を進行した。
朝は境内の水門を入ってすぐの場所に設けたお札焼きの場所で、午前9時から焚焼(ぼんしょう)式。降りしきる雪の中、立ち上がる火と煙に向かって門谷貫主が法要を行った。
10時から牛の間で鬼のおはらいを行った。舞台で鬼踊りを演じる赤、青、黄、黒、緑の5匹の鬼と三途川婆(そうずかば)をはじめ本成寺鬼踊り奉賛会(小林敏文会長)の会員がおはらいを受けた。本来は本番前に出張公演があるため、早朝におはらいを行ってから出発するが、ことしは感染防止で出張公演がすべてキャンセルになったため、いつもより遅いおはらいとなった。
半焼が鳴って午前11時から1回目がスタート。門谷貫主を導師に10人ほどの僧りょで法要を営んだ。邪気をはらうため、参拝者の頭上で木剣を打ち鳴らした。
門谷貫主はあいさつで、新型コロナウイルスが昨年秋に収束に向かう兆しが見えたが、オミクロン株が拡大していることにふれ、犠牲者に哀悼の意を表し、感染者には一刻も早いく治るよう願い、医療関係者に感謝した。
「いずれにしろコロナ禍で、豆に暮らせることが何より。わたしどもはつつがなく過ごせることを仏さまに感謝し、お祈りして本日の節分会を勤めさせていただいている」と話した。
続いていよいよ鬼踊り。僧兵の口上に続いて鬼が1匹ずつ正面の舞台に上がった。舞台は例年、正面と左右に設置するが、ことしは正面の1カ所だけにし、かわりに正面の舞台をこれまでの12畳からことしは16畳に広くした。
例年なら鬼が登場すると赤ちゃんが泣き出し、鬼に抱き上げてもらおうと親が赤ちゃんを鬼に差し出すなど、本堂をぎっしり埋めた参拝者で騒然となるが、ことしは静かなまま。伝統芸能の舞台を見ているような格調の高ささえ感じさせる鬼踊りだった。ただ参拝者は例年のよなかみしもは着ていない。
門谷貫主の「福は内!」を合図にいっせいにますに入ったいったダイズを豆に投げつけて鬼を撃退。このあとも例年なら鬼が境内を歩いて鐘楼堂へ向かい、鐘をついたらつのが取れて人間に戻るというストーリーがあるが、今回は本堂の扉を出ると鐘楼堂へ向かわずにすぐに本堂の裏へ向かった。
初めて鬼踊りを見た三条市の滝沢亮市長は「こんなにわたしに豆があたるとは思わなかった。直接、来たのもわたしへのメッセージだと思って受け止めた」と笑わせ、。「市民の皆さんの分も代表して強めに投げておきました」、コロナ禍で続くなか「この状況を一日も早く終わらせたい」と願った。
鬼踊りのあと投げた豆は一般参拝者が拾ってきれいになくなるが、ことしはほとんど拾われなかったため、大量の豆が残ったままで足の裏が痛くて歩けないくらいだった。