「マイスターに認定していいものか」33人目のにいがた県央マイスターに学究肌の中野信男さん (2022.2.8)

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新潟県三条地域振興局(佐藤孝明局長)は7日、33人目の「にいがた県央マイスター」に金属表面処理の専門業者、株式会社中野科学(燕市小池)の代表取締役、中野信男さん(72)=燕市宮町=を認定した。中野さんは工学博士で、職人の勘や経験に頼っていた電解研磨の処理技術を科学的、工学的に解明した実績が認められたもので、手仕事のイメージが強いなかにあって学究肌の技能者の認定は異例だ。

33人目のにいがた県央マイスターに認定された中野信男さん
33人目のにいがた県央マイスターに認定された中野信男さん

にいがた県央マイスター制度は、県央地域の高度な産業を支える卓越した技術者や技能者を認定、表彰して、技能の維持や継承、人材の確保や育成を図ろうと2005年に創設された。7日、三条地域振興局で第14回の認定証授与式を行い、佐藤局長から中野さんに認定証と盾を授与し、にいがた県央マイスターズクラブの川崎勝司会長からマイスターブルゾンを贈った。

電解研磨とは、研磨する金属製品を電解液に浸して通電し、金属表面を熔解させて研磨効果を得る。バフ研磨など物理的な研磨では難しい異物や微細な汚れを除去でき、耐久性の高い滑らかでクリーンな表面となり、バフ研磨では届きにくい複雑な形状の部品やパイプの内側の研磨が可能。仕上げ研磨の前処理や耐久性の向上に使われる。

電解研磨する前(左)と後の金属部品
電解研磨する前(左)と後の金属部品

この技術はこれまで職人の勘や経験に頼っていたが、中野さんは科学的に解明し、革新的な技術開発と徹底した品質管理で、高機能な表面処理技術の応用を広げて前進させた第一人者だ。

中野さんは燕市出身で三条高校、新潟大学工学部を卒業し、大学院へも進んで工学科学科を専攻した。1977年に父が創業した中野科学工業所(現・中野科学)に入社後、金属表面加工の独自技術の研究、開発を続けてアルミニウムやチタンの電解研磨技術を確立した。

佐藤三条地域振興局長から認定状を受ける中野さん
佐藤三条地域振興局長から認定状を受ける中野さん

あわせて分析測定機器を用いた定量的な品質管理で、ナノレベル(100万分の1ミリメートル)の精度管理を実現。異物混入防止に高い精度が求められる半導体製造関連部品や医療機器関連部品などの表面処理に電解研磨技術を応用し、国内企業の製品開発に貢献した。アルミニウムの電解研磨に関する研究で、2014年に工学博士の学位を得て16年に特許を取得している。

選考委員長の長岡技術科学大学・新原皓一名誉教授は、中野さんの研究者としての活躍に「こういう方をマイスターとして認定していいのかと思った。というのはわたしと同じ分野で活躍している科学者」、「わたしの右にいてもいいような方」と評し、「われわれも成し遂げなかったことを黙ってこっそりと達成された」と絶賛した。

選考委員長の長岡技術科学大学・新原名誉教授
選考委員長の長岡技術科学大学・新原名誉教授

近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性が叫ばれるが、「今までの技術をデジタル化することによって、まったく新しい機能を付与でき、そこに新しい産業、新しい製品が生まれる」と時代を先取りした中野さんの先進性を称賛した。

さらに「DXをやっているけど、なかなかうまくいかないところを、DXをやってますと言わずに実現されている」と驚く。研究による直接的な成果だけにとどまらず、ほかの分野へも波及し、「DXという考え方が三条地域に根付くかも知れない。この地域の産業構造ががらっと変わる可能性がある。そこに中野さんの大きな成果がある」と大きな期待を寄せた。

三条地域振興局の佐藤局長
三条地域振興局の佐藤局長

佐藤局長はあいさつで「今後はにいがた県央マイスターとして地域産業の実力向上や研究開発人材の育成など、新たな付加価値の高い創造に貢献していただけることを期待している」と述べた。

中野さんをマイスターに推薦した燕商工会議所の田野隆夫会頭は「誰彼なく製造メーカーの困りごと、相談を快く話を聞いて企業、各工場の問題解決にたくさん携わり、そういう意味では、研究者と言うより産業界と一緒になって、地場産業の底上げ、研究開発に取り組んできたすばらしい方」、川崎会長は「これから学生や子どもたちに中野さんの研究した技術をわかりやすく実験などを交えて育ててやりたいというお願いがある」と話し、それぞれ中野さんへの期待の大きさを話した。

中野さんを推薦した燕商工会議所の田野会頭
中野さんを推薦した燕商工会議所の田野会頭

中野さんはあいさつで、電解研磨は金属洋食器や金属ハウスウエアをつくるさまざまな要素技術のひとつで、「これを発展させていくためには、経験と勘が絶対に必要。あと観察して、もっともっと素晴らしい仕上がりになるようにする必要がある」。

そのうえで「何百年かけて築いた学問を使わないことはないだろう」と考え、「車の両輪」として、ひとつは熟練と勘は絶対やっぱり必要だが、並行して学問的に追究、発展させていくのも必要。「この両方があって、もっともっと良い技術になると思っているので、その点で評価していただいたということを非常にうれしく思う」と感謝した。

中野さんにマイスターブルゾンをかけるにいがた県央マイスターズクラブの川崎会長
中野さんにマイスターブルゾンをかけるにいがた県央マイスターズクラブの川崎会長

地域経済の背景にもふれ、「この燕三条地域に生まれて、燕三条地域で仕事をやっていて、地域の方々から育てていただいて現在に至った」。新潟県工業技術総合研究所、長岡技術科学大学、新潟大学などからアドバイスや指導を受け、共同研究にも取り組んだ。

だから「ますます私のやってることを地域に還元して、もっと良い地域になればと思っている。まだまだ発展途上で、さらに精進して頑張るので、皆さんからいろいろと支援をお願いしたい」と述べた。

中野さんにマイスターブルゾンをかけるにいがた県央マイスターズクラブの川崎会長
記念撮影

授賞式後、中野さんは「盾とか式典があると本当に実感がわく。本当に認定していただいたんだという喜びがあった」と顔をほころばせていた。


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