東日本大震災から11年になった11日、福島第一原発事故対応の前線基地となったサッカーナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町)で行われた復興支援イベント「SONG OF THE EARTH 311」で、ことしも犠牲者をいたみ復興を願う新潟県三条市の名物、六角凧が青空を舞った。
このイベントは全国の被災地を支援する「一般社団法人LOVE FOR NIPON(ラブフォーニッポン)」(廣末順代表理事)の主催で毎年開かれている。10日から12日までの3日間、被災地で活動を続けてきたアーティストによるライブや地域のフード、ワークショップ、アクティビティなどのマーケットが行われた。
同法人新潟支部長に就く三条市・斉藤巧さん(45)=スペースデザインタクミ代表=の縁もあり、2019年から三条凧協会による凧揚げ「3.11夢の大凧あげ」が行われている。
三条市では毎年6月初めに三条凧合戦が行われている。揚げた凧は、三条凧協会会長でもある須藤凧屋の須藤謙一さん(54)が福島県広野町特産のバナナの茎ですいた「バナナ和紙」で合戦に使われるサイズの六角凧14枚を製作。そこに福島県内の小中学生に夢を文字や絵で描き入れてもらった。
福島県主催で行われた追悼式典のラジオ中継を会場に流した。東日本大震災が発生した午後2時46分、鳴り響くサイレンの音を合図に黙とうをささげた。廣末代表理事のあいさつのあと、凧揚げに。三条凧協会から揚げ師15人が現地を訪れて揚げ、イベント参加者にも凧糸をにぎって凧揚げを体験してもらった。
11年前のこの日は雪も舞うほどの寒波が襲来していたが、この日は快晴。春本番の暖かい陽気に恵まれた。凧揚げには強すぎるくらいの風が吹き、次々と六角凧が青空に舞い、ぐんぐんと高度を上げた。
はっぴを着た揚げ師から凧糸を渡された来場者は「うそー、重い!」と凧糸が引く力の強さに驚き、「無理、無理、引っ張られる!」と引きずられそうになって、大はしゃぎで凧揚げの楽しさを体感していた。
斉藤巧さんは「福島の子どもたちの夢を描いた大凧が空を舞ってなんとも言えない気持ちになった。まだまだこれからだが、続けていきたい」。須藤さんは「福島の方々がいかをさわってみてすごく楽しかったとか言う話をいただけた。LOVE FOR NIPPONさんもチームとして出てくれるということで、さらにおもしろくなると思う」と笑顔で話した。
また、廣末代表はあいさつで、「1年に1回、きょうここだけは、言わせてください。全国の原発反対運動してた人たち。なんでここにいないんですか。原発が危険だってことを知ってた人たち。原発事故が起きてから、国会議事堂前じゃなくて、なぜ福島に来ないんだ。あのとき国会議事堂前に行った人たちは、なぜ続けないんだ。続けないんだったら、福島に来てほしいです」と感情をあらわにする場面もあった。
また、「ことしの6月、三条市で開かれる凧揚げにLOVE FOR NIPPONチームを結成して参加させてもらうことになった」と発表した。