鎚起銅器(ついきどうき)の技を200年にわたって伝える新潟県燕市の株式会社玉川堂(玉川基行代表取締役・中央通2)で、19日から27日まで「ついきどうき と からむし」展が開かれいてる。新潟県中越地方で作り続けられる上質な織物、越後上布(じょうふ)、小千谷縮(ちぢみ)の原料となる植物カラムシ(苧)が鎚起銅器と合わせて展示されている。
昨年春に出版された『からむしを績(う)む』(株式会社博勝堂・3,800円)にまつわる展示会。これまで地元や長野県松本市や京都でも出版記念展が開かれている。
編者は、カラムシの栽培を続ける福島県昭和村に、からむし織体験性として20年ほど前に移住し、2015年に予約制ショップ「渡し舟」を開設した渡辺悦子さん(49)と舟木由貴子さん(47)の2人。カラムシの栽培から糸づくり、機織り、商品づくりまで手掛ける。
テキストを担当したのが、「民藝」を探求する哲学者、明治大学理工学部 准教授の鞍田崇さん。以前から昭和村に通い、毎年のように玉川堂を訪ねている。玉川堂では、空いている2階の和室で銅器以外の企画展を不定期で開催しようと考えていたところで、鞍田さんが橋渡しになって今回の第1回展が実現した。
カラムシから手仕事で生まれた「渡し舟」の商品をはじめ、カラムシや鎚起銅器を作るのに使う道具も展示。『からむしを績む』も販売している。からむし織のマルチカバー、風呂敷、袋、敷物など21アイテムあり、中座布団(税込み1万8750円)が人気と言う。
カラムシは細くて強くてしなやかで、上質な織物の魅力を引き立てくれる素材。新潟から山形、会津に栽培技術を伝え、とくに昭和村のカラムシは品質が高く、新潟から買い付けに来て越後上布、小千谷縮には欠かせなくなった。
19日、会場で展示作業する渡辺さんは「無数の手が加わることでできあがっている」、舟木さんは「簡単に何でも手に入る世の中だけど、手間をかけてつくり出せるものがあることを知ってほしい」。
玉川堂の番頭の山田立さんは「カラムシも銅器も黙っていればなくなってしまう技術。日々、悩みながらやっているということで同じと思う」と話していた。毎日午前9時から午後4時まで、入場無料。