10日投開票が行われた新潟県燕市長選に現職鈴木力氏(61)の無投票当選の阻止を大きな動機に立候補した更科晃氏(58)は、予想をはるかに超える7,000票を上回る得票を自分ではなく弱者のために投票されたもので、死に票にならないことを願う一方、鈴木氏のリーダーシップにエールを送った。
更科氏の選挙事務所には、午後8時過ぎに支援者や親戚が集まり始めた。8時半ごろに更科氏が到着すると、自身で支援者や取材に来た記者に茶を出し、支援者は選挙の労をねぎらって候補者本人に花束を贈るなど、和やかなムードで開票を待った。
この日は9時半ごろに投票所で投票を済ませたあとは、基本的に家で過ごした。陣営には選挙に詳しい人はなく、スマートフォンで開票の中継を見ながら結果を待った。更科氏は市民に投票を訴えたが、50%を割る45.31%の投票率に残念がった。
1回目の午前10時の開票の中間発表開票で、5,000の得票に支援者はどよめいた。供託金没収のラインは有効投票総数の10分の1、2,951票。3,000票を下回る可能性もあり、まずはそのラインを超え、多くの人に投票した達成感も味わい、ほっとした。
それからまもなく鈴木陣営が万歳したことが伝わったことを受けて敗戦の弁。「残念な結果になり、これが私自身の実力であり、応援いただいたにもかかわらず、支援者や市民の皆さま誠に申し訳ありません」と頭を下げた。
一方で「私に投票していただき、誠にありがとうございました。中学校の同級生もわざざわざ街頭演説や事務所に来てもらったりして大変ありがたかった。このような結果にはなったが、大変たくさんの票をいただき、ありがとうございました」と感謝した。
選挙戦を振り返って、「わからないことがいっぱいあったがなんとかここまでくることができた」。予想を上回る得票に「自分のためではなく、弱者のために皆さんが入れてくれたのだと思う」と述べた。
今後については、この秋の燕市議選について出馬予定はないどころか、人に言われるまで秋に市議選があることも知らなかったと言う。市議選が無投票になる場合に出馬する意思を問われると、ほかのだれかが出てくれると思うと、関心はない。
市職員を退職して立候補したので、今後は無職、無収入にはなるが、7,000票を死に票にしてしまうかどうかは、これから自分がどう動くかにかかっているとし、政治という形ではなく何か弱者のためにできることに取り組みたいと意欲も示した。
勝利した鈴木氏については「当選おめでとうございます。選挙で選ばれた市長として今まで以上に強烈なリーダーシップで市政のために力を尽くしていただきたい」とエールを送った。
ワーキングプアの解消をはじめ選挙戦で訴えた更科氏の政策については「言っていることが特殊だったかもしれないが、選択肢として主張することは主張して、あるていどは伝わった。種はまかれた」と自負も。最後も更科氏は支援者に「毎日、来てもらって休みも返上して動いていただき本当にありがたかった」と見送った。