新潟県燕市で「2022つばめ桜まつり」のフィナーレを飾る「分水おいらん道中」が17日、行われている。新型コロナウイルス感染防止対策で燕市分水総合体育館を会場に形を変え、映像とコラボレーションした新感覚の分水おいらん道中を披露している。
分水おいらん道中は1924年(大正13ごろに地元の有志が行った仮装行列が起源と言わる。大河津分水路の桜土手を3人のおいらん役を手古舞、新造、かむろ、舞妓など約60人の行列が引き立てる。毎年、県外客も含め何万人もの見物客を集める名物行事だ。
しかし感染防止のため、一昨年、昨年と2年続けて中止した。ことしは地元の大河津分水路が通水100周年。記念の年でもあり、何とか開催したいと、例年なら荒天用の屋内の分水総合体育館に会場を変え、感染があったときに観覧者を追跡できるように観覧は事前予約制として1日に3回、行っている。
1回目と2回目は一般向けの有料で、3回目は燕市民や関係者を無料招待。1回目は定員370人のところ観覧は200人余りにとどまった。
毎年3人のおいらん役を公募しているが、ことしは5年前にもおいらん役を務めた県職員の横山(旧姓:大野)美和さん(37)=新潟市=1人に「ぶんすい太夫」のおいらん役を依頼した。
大きなスクリーンでおいらん道中を紹介する映像を流してからスタート。大河津分水桜土手を撮影した映像に舞い散る花びらなどを合成した映像を背景に三味線が響くなか、絵巻のようなおいらん道中が進んだ。
分水太夫はかつらも含めて重さ約30kgもあるきらびやかな衣装を着けた。途中で行列を止め、三枚歯の高下駄を大きく外側に振りだしてハの字も描くように足を前に出す「外八文字」という独特の歩き方を披露。映像と相まったまさに時代絵巻は、青空の下よりも幻想的でつやっぽいおいらんとなった。
千葉県市川市から妻とマイカーで訪れた80代の男性は、何年か前に入院した加茂市に住む弟の見舞いに訪れた帰りに、たまたま分水おいらん道中に立ち寄ったが、荒天で燕市分水総合体育館となり、定員がいっぱいで会場に入れなかった。次は「かみさんを連れて来ようと思ったら中止になって」。ことしはネットでチケットを買い、寺泊で魚を買ってから会場に到着した。
「映像を見せてもらったらおいらんは3人もいるじゃないですか。今回は1人だし。それにさっきサクラも見てきましたがもう終わってましたもんね。日曜に開花が合うのは難しいですよね」と話しながら、「私は祭りが好きなので、とても楽しく見せてもらいました」と満足していた。
柏崎市から訪れた92歳と85歳の夫婦は、旅行代理店が募集したツアーに申し込んで初めての分水おいらん道中。「地元の方の協力があってからこそと思いますが、こんなに盛大な行事をするのは大変だったと思います。外八文字が大変よかった」と喜んだ。