昨年11月に新潟県燕市の市立吉田中学校で女子生徒が校舎から転落死したのに伴って設置された第三者委員会「燕市いじめ防止対策等専門委員会」は、28日開かれた臨時の燕市教育委員会で約150ページに及ぶ調査報告書を小林靖直教育長に提出。事故をあらためて「自死」としたうえで、女子生徒がいじめととらえる状況はあったが、自殺とは無関係と結論した。
燕市いじめ防止対策等専門委員会の吉澤克彦委員長は「同様のことが2度と起こらないようにするためにこの報告書を真摯(しんし)に受け止めて対策を進めていただきたい」と報告書を手渡すと小林教育長は「再発防止に向けて一生懸命に取り組んでまいりたい」と述べた。
続いて吉澤委員長と小林教育長、それに吉田中学校の齋藤哲也校長と鈴木華奈子教育委員会主幹も同席して記者会見を行い、報告書の概要版も配布した。
関係の深い生徒への聞き取りで、6月ごろと9月ごろに女子生徒への陰口があったことを複数の生徒から確認でき、これを女子生徒がいじめられていたと受け止めた可能性はあるが、女子生徒のその後の行動に変化はなく、自殺と結びつけることはできなかった。
6月ごろにもある生徒がほかの生徒に女子生徒をいじめるよう依頼したという記録もあったが、依頼された生徒はこれを取り合わず、いじめの事実はなかった。SNSでも提出した資料から自殺の背景や因果関係、女子生徒へのいじめに関する記述などは見つけられなかった。
女子生徒の書き置きにはいじめられていたという文言はあるが、文面には周りの友だちへの思いやりのある別れの言葉と受け取れる表現で、いじめていた相手の名前はなくうらみや苦しみを読みとれず、いじめで自殺を選んだという単純な図式には収まらない理由があったと推測した。
これらから女子生徒がいじめととらえるような事実はあったが、自殺とは無関係で、自殺の理由は不明とした。ただし、第三者委員会は生徒への影響などに配慮して直接、生徒への聞き取りは行っていない。
遺族には2日前の26日、吉澤委員長、小林教育長、齋藤校長の3人が訪問して報告書を渡した。27日に遺族からコメントを受け取った。
コメントは「今後、このようなことで悲しむ人が出ないようにおとなとして子どもたちと幸せになる選択を取れる人が1人でも増えるように静かな時間のなかで一緒に考えていただければ家族としてはうれしい」などとあり、齋藤校長が時折、声を震わせて読み上げた。報告書の概要版はホームページなどで公開する。