新潟県警三条署は31日、携帯電話で通話しながらATMを操作していた高齢者を警察官に届け出て還付金詐欺被害の未然防止に貢献した女性に署長感謝状を贈った。金融機関職員やコンビニ店従業員など業務中の被害防止は多いが、それ以外では珍しい。
表彰を受けたのは三条市田島、会社員菅家直子さん。21日午後4時ごろ、三条市内の金融機関のATMを利用していたところ、隣りのATMで60歳代の女性が携帯電話をかけながら操作していた。
「電話しながらやってるのが気になって耳がそっちにいってた。所々で怪しい会話が聞こえ、向こうの指示に従って押してる感じがあった」。番号を話す声が聞こえた。
女性も途中で不審に思ったのか、電話の相手に大丈夫ですよねと確かめている声が聞こえた。それで「身内とかそういう人じゃないと思って、そこで詐欺と確信した」が、「何度か声をかけようとしたが、かけられずに駐車場の車に戻ったが、やっぱり気になった」。
車内に待たせていた中学1年生の長女に、ATMで女性が詐欺に遭っていることを話したが、「やっぱり行ってくる」と意を決してATMに戻ろうとしたら、たまたまパトカーが通りかかったため、警察官を呼び止めて特殊詐欺らしいと伝え、菅家さんはその場を立ち去った。
その後、警察官の説明で女性は思いとどまり、被害を防げた。三条市職員を名乗る介護保険料の還付金詐欺で、電話の指示に従っていたら100万円近くを振り込まされたと思われる。菅家さんは署長感謝状を受けると連絡をもらって被害を未然防止できたことを知った。
当時は同様の特殊詐欺の前兆電話などが相次いでいたため、三条署では市内のATMのある金融機関などをパトロール中だったが、借りにパトカーに出くわさなくても「一応、行こうとしていた」と菅家さんは振り返った。
「すごく迷った。声をかけても違うわよって怒られるかもしれないし。でも、良かった。自分としてもあの時、声をかけずにその人が被害に遭ってたら、ずっと引っかかるものがあったと思うので、そういう意味でも良かった。例え違ったとしても声をかけるべき」と正しい選択をしたことを実感する。
家老直貴署長は「また、同じようなことがあって声がけして違うわよ、あんた関係ないでしょ、と言われたら、ぜひ110番してください。警察が駆けつけて菅家さんに代わって相手に話をする」と約束。菅家さんの行動に「すばらしいモデルケース、模範です。感謝しても感謝しきれいないと話した。
「振り込まれなかったと聞いてほっとした」と菅家さん。現場に居合わせた長女に「感謝状をいただけることになったよって言ったら、お母さんすごいじゃんと言われた」と笑った。
三条署管内ではことしに入って5月29日までに特殊詐欺被害が5件あり、被害総額は689万円にのぼる。24日にも管内で同じような手口で100万円をだましとられた被害が出ている。