8日に安倍晋三元首相が街頭演説中に銃撃を受けて亡くなったのに伴い、自民党はすぐに閣僚や役員を招集した。翌9日は参院選の選挙運動最終日だったが、各都道府県連に「暴力には屈しないという断固たる決意」を示すため、選挙活動の続行を通達。岸田文雄首相は選挙戦最後の応援演説を9日午後6時半から新潟選挙区の古町十字路で行い、首相として「選挙を完結させる大きな責任がある」と決意を示した。
街頭演説は黙とうから始まった。アーケードの上にも警察官が上がって目を光らせ、横断歩道が青に変わると演説者の方向へ進むのを阻止するようにロープを張るなど、これまでにないようなものものしい警備のなかで行われた。
岸田首相は左腕に喪章を巻いて街宣車に上がった。岸田首相は「まず冒頭、きのうの出来事についてお話をさせていただく」と始めて前日8日に安倍元首相が銃殺されたことにふれた。
「民主主義国家日本において、民主主義の根幹である選挙の最中に暴力で言論が封殺される。こんなことは絶対に許してはならない。最大限の強い言葉で非難するとともに、私達は、私達の民主主義、私達の選挙は、暴力には負けないということをしっかり示していかなければならない」とした。
安倍元首相は憲政史上最長の8年8カ月、政権を担った。不世出のリーダであり、リーマンショック後の日本経済の立て直しの先頭に立ち、平和安全法を通じて日本の外交安全、日米同盟のきずなと信頼を取り戻す大きな成果を上げた。世界のリーダーとわかり合い、民主主義国家のきずなを深め、自由で開かれたインド太平洋を実現する取り組みに大きな貢献をあげたと実績を紹介した。
新潟県民の大きな関心事の拉致問題でも、若いころからその重要性を指摘して取り組み、憲法改正についても非常に強い思いをもっていた。自身とは同期でともに活動し、安倍内閣の一閣僚として苦楽をともにし、長い時間を共有した大切な友人でもあったと話した。
「安倍元総理がこんな形で失われてしまうと本当に悔しくてならない。しかし、いちばん悔しいのは安倍晋三本人と思う」。
今回の事件を受けて選挙運動を中止した方がいいという声もあったが、「日本の現職の内閣総理大臣として民主主義を守るため、自由で公平で安全な選挙を完結させる大きな責任があると思っている。堂々と皆さんの前に立って最後まで訴え続けていきたい」、「民主主義を守るのは皆さん一人ひとり。力を合わせて民主主義を、私たちの大切な選挙を守り、この選挙を完結させようではないか」と訴えた。
最後にも「この18日間、本当にいろんなことがあった’。大きな悲しみもあった。絶対に忘れることができない選挙となった。だからこそこの新潟選挙区、負けるわけにはいかない。ぜひこの選挙戦、最後の最後までお力添えをいただきたい」と支援を求めた。
「どっちが最後まで頑張り通せるかどうか、これが選挙であります。厳しい選挙、激しい選挙、いろんなことはあったけれど、みんなで頑張った。だから明日につながる選挙の結果を出せた。そんな選挙にしようではありませんか」と呼びかけた。
岸田首相があまり野党を批判することはないが、「国の内外でこうした大きな曲がり角を迎えている今、政治は相変わらず相手の悪口ばかり言ってるんじゃ、批判しているばかりじゃ、日本のあすを切り開くことはできない。相変わらず実現不可能な政策を並べて国民の関心を買う、そういったことをしていて、日本のあすを示すことはできない」と声を張り上げて厳しく批判する場面もあった。