24日行われた三条市図書館等複合施設「まちやま」のオープニングセレモニーで、施設の設計にかかわった建築家の隈研吾さん(67)による施設設計解説会が開かれ、隈さんは時間や記憶を含めて地域が「一体となってつながることがいちばん大事」と話した。
竣工式では、本館とサイエンスホールの2つの建物をつなぐ屋根付き屋外スペース「通りドマ」でテープカットから本成寺の鬼踊り、三条祭りの先供の妙技、三小相承会の「三条凧ばやし」の踊りと三条の伝統に根差したイベントが行われた。
隈さんは「通りドマのスペースの使い方として最高のぴったしのイベントを開いていただいて、三条市のコンテンツがすごいたくさんあることに圧倒させられた」話した。
隣りのまちなか交流拠点「ステージえんがわ」と一体になってつなぐのが大事で、滝沢亮三条市長が「まちやまスタイル」の言葉で表現したことに、「まちやまスタイルが実感できる」と喜んだ。
コンセプトは「地域がつながってまちやまがつながりを強化する、さらに活性化することができたらいいなというところからスタートした」。20世紀は大きくて目立つ建築物を目指したが、今はそういう時代は終わったみんな感じている。超高層、集中の時代ではなく、「まちというもの自身が生活の場で、そこを歩いて、そこのまちの空間自身を楽しむ時代が来ている」。
それは「ウォーカブルシティー」や「コンパクトシティー」と呼ばれ、集中の都市からウォーカブルな都市に変わっていく大きな時代の流れにある。その流れが新型コロナウイルス感染症によって加速。ビルは密で。ストレスを生み、体にも良くない。
これからどうやって実際のまちに反映するかというところで、「まさに絶妙のタイミング」で「まちやま」がオープンし、「待ち望んでいた施設が世界の新しい流れにぴったりはまった」。
新し時代の建築は「つなぐ」と「開く」が大きなテーマで、どうやって回りに開き、回りからも親しまれ、行って見たいという親しみやすさを感じさせるか。「そこで大事なのは親しみやすい形は何なのか」と考えた。
このあと隈さんは実際に館内を歩いて解説した。図書館のサインには、ほかの日本の図書館にはない黒さびによる黒皮仕上げを使った。ガラスの衝突防止シールにワッシャーをそのまま張りつけた。
カフェコーナーは、ミシュラン1つ星を獲得したパリの「あい田」のオーナーシェフ、三条市出身の相田康次さんがプロデュース。この日は相田さん本人がカフェのキッチンに入った。
隈さんは仕事でパリに行くと「あい田」を利用し、相田さんとも知り合い。「パリの食通が相田さんのところで食べるのが夢というくらい最高のレストラン」で、相田さんのカフェができて「最高にうれしい」と再会を喜んだ。
図書館のカウンターは組み木の技術で支えており、「このカウンター自身がひとつの建築」。併設の鍛冶ミュージアムは図書館と一体化し、「この建物らしいつながるというテーマにしたミュージアム」。ショーケースは耳付きの板に三条のものづくり象徴する鉄のフレームを組んだ。
むきだしの天井には、ダクトと吹き出し口の接続を工夫。床は自然なむらを生かし、「町工場の臨場感が伝わる」。
図書館の開架には木材をふんだんに使った。階段に金網のネットを張り、道の延長のイメージでゆったり歩ける階段を設置した。
開館して人であふれる館内を見て「人がたくさん入ると全体がまちみたいになる。まちのなかで皆さんが好きな場所を見つけて好きな本を探したり、好きなお茶を飲んだりとか、全体がまちっぽくなってるなと思ってうれしくなった」。
さらに「時間をつなぐ、記憶をつなぐ、すると卒業する人も昔を思い出すかもしれないし、小学校を知らない今の子どもたちも、こういうところでみんな勉強してたんだなと時間でつながってくれたらいい」と願った。