新潟県三条市出身の俳優、高橋克実さん(61)は2日、初の三条市PRアンバサダーに就任した。この日、東京で行われた委嘱式では高橋さんが司会を務めたバラエティー番組「トリビアの泉 〜素晴らしきムダ知識〜」にちなんで滝沢亮市長が三条市に関するトリビアを披露したが、ここでの高橋さんにとって本当の「満へぇ」は「三条小跡地」だった。
番組は約20年前に放送された。視聴者から寄せられた「明日人に教えたくなる」ようなトリビア、雑学をタモリさんをはじめゲストが「へぇ」と声の出るボタンを押して品評するというもの。高視聴率の人気番組で、俳優の高橋さんのタレントとしての知名度向上に大きく貢献した。
委嘱式で三条市は、番組になぞらえて3つのトリビアを用意した。その3つは、三条市名誉市民のジャイアント馬場さんの愛車だったキャデラックが三条市の諏訪田製作所にあること、三条市には切ると気持ち良くなるタダフサのパン切り包丁があること、燕三条鉄アイスなどものづくりまちの三条の人は鉄を食べること。
番組で使われていたような「へぇ」と声が出るボタンを用意し、滝沢市長がフリップを示してトリビアを披露し、高橋さんに「へぇ」ボタンを押して品評してもらった。高橋さんは燕三条鉄アイスの存在は知っていて、それぞれのトリビアに「へぇ」ボタンを押してタレント然として驚いたり、感心したりと対応していたが、いちばんの「へぇ」はそれ以外のところにあった。
滝沢市長は、三条の鍛冶の話に続けて「高橋さんの母校の三条小学校の跡地にですね、新しい図書館がオープンいたしまして」と、7月24日にオープンしたばかりの図書館等複合施設「まちやま」に設置された鍛冶ミュージアムについて話した。
滝沢市長の話が終わるのを待って高橋さんは、「あー、いいですねー」とうなづいたものの、続いて「ていうか、あの、今、ちょっとびっくりしたんですけど、三条小学校“跡地”!。わたし母校なんですけれども。“跡地”!。あー…ないんですね、あの校舎。あー。そこに鍛冶ミュージアム」と目を丸くした。
三条小学校は2017年3月に閉校し、裏館小学校に吸収統合された。その跡地に「まちやま」が建設された。母校の閉校を知らなかった高橋さんは、思いがけない話にすっかり三条っ子に戻って素になり、言葉を失うほどの驚きようだった。
滝沢市長から図書館が建築家隈研吾氏の設計と説明を受けたあとも「へー、そうですか。へー、“跡地”ね…。給食センターもない?」と、また“跡地”ワード。「僕が小学校6年生で100周年でしたから。そりゃ相当たちますもんね」、「それはそうですね。もう、修繕というか、もうそうですね。跡地にならざるを得ないんですね」と、どきまぎした。
さらに、高校生のときにどこで遊んでいたかという質問でも「高校は、ぼくは三条東高校だったんですけど。そうですね、さっき三条小学校がなくなったということで、東高ももうないので、三中、三中はまだ形はちょっと違うけど残って…だからぼくが通っていた木造校舎もないので、ほぼほぼもう全部ない感じですね」と、またも三条小に言及し、動揺は隠せなかった。高橋さんにとってこの日のいちばんのトピックは間違いなく三条小の閉校だった。