加茂市出身で田上町に住む藤田郁美さん(39)は23日、自費出版した絵本『心に寄り添うおじぞうさん』15冊を加茂市に寄付した。加茂市内の小中学校に1冊ずつと図書館に置く。また12日にも田上町にも小中学校に1冊ずつと学習センターに置く5冊を寄付している。
『心に寄り添うおじぞうさん』はA5版変形36ページ、税込み1,430円で、7月17日に発刊した。藤田さんがポストカードに描きためた数百枚の作品から選りすぐった32枚を収録。全体を通したストーリーはなく、作品1点ずつで完結している。
画材は筆ペンで線を引き、言葉を書き、クレヨンで彩色。絵手紙のスタイルで、ほのぼのとしたおじぞうさんの絵と言葉を組み合わせている。
藤田さんは高校生ころから絵を独学で始めた。アルバイトしていた加茂市のすし店で、店内に掲示する絵や公休日のちらしに絵を描くことを頼まれ、好評でそれは社会人になってからも続いた。
本格的に描くようになったのは、2020年に新型コロナウイルス感染症が流行してから。今は小学校5年生になったひとり息子と自分自身への応援歌にと作品に向かった。身近な草花、生き物、自然を題材に、何も言わずに寄り添ってくれるようなお地蔵さんとつらい時期に自分がかけてほしかった言葉を掛けあわせて描く。
まとまった数の作品ができ、2021年7月に田上町交流会館で初めての個展を開催。そこで得たあたたかい言葉や手紙をに背中を押されて出版を決意した。
藤田さんは23日、加茂市役所を訪れて藤田明美市長に直接、寄付する絵本を手渡し、「こんな時期だから子どもたちに届けたい」と絵本に込めた思いを話した。藤田市長は「読むとあたたかい気持ちになって今の自分でいいんだっていう肯定的な気持ちになるので、とくにこのコロナ禍でつらい思いをしている多くの人の手に読んでほしい」と願った。
藤田さんは「何気なく開いた1ページの言葉が、子どもたちの背中をそっと押してあげられたり、あすへの希望につながることができたらうれしい」と言い、続編については「やってみたいのかもしれない。皆さんから反響が来たら意欲がわいてくるので」と前向きだった。
また、田上町の「子育て(延命)地蔵」で知られる定福寺では、24日から御朱印に藤田さんが描いた地蔵をデザインしたスタンプを押すとインスタグラムに投稿している。この絵本は、コメリ書房の加茂店、三条店、五泉店、柏崎店、新発田店と三条市の野島出版、田上町の定福寺、東龍寺、道の駅たがみ、ホテル小柳で購入できる。