新潟県三条市の県立三条東高校に眠っていた国内に4台しか現存しないフランス・エラール社製のピアノの修繕費用に充ててもらおうと、三条ロータリークラブ(西山徳芳会長)が70万円を寄付した。
エラールの復元に取り組むNPO法人燕三条エラール推進委員会に寄付したもの。22日、エラールを保管予定の三条市図書館等複合施設「まちやま」で寄付目録の贈呈式を行った。
西山会長からエラールの復元に取り組むNPO法人燕三条エラール推進委員会の理事長でオペラ歌手の永桶康子さん(48)=三条市=に目録を手渡した。
エラールはピアノの原型とされる。ベートーベンをはじめ欧州の著名な作曲家に愛される名器を生み出した。国内には三条東高校を含め赤坂迎賓館など4台しか残っていない。
三条東高には1932年(昭和7)、創立20周年記念で同窓会員などの寄付で1930年製の降るコンサート型のエラールが購入された。
しかしほとんど使われることなく死蔵された。1982年(昭和57)には創立70周年記念新校舎竣工記念式典でエラールによる演奏会が開かれ、一度は息を吹き返したが、それから再び眠りについていた。
エラールの歴史的価値や希少性を含めて名器を復活させようと永桶さんらが声をあげた。老朽化したエラールを演奏できる状態に復元するには大規模な修繕が必要で、NPO法人を設立して修繕にかかる費用の調達にも取り組んでいる。
ロシアのウクライナ侵攻の影響で部品の調達が難しくなり、修繕には当初500万円を見込んだが1.3倍くらいに膨らみ、修繕の完了も遅れて早くて来年10月ごろにずれ込んだ。
NPO法人の13人の理事が出資し、三条市を中心とした全国からクラウドファンディングに寄せられる寄付、地元のもづくり企業からの寄付などを募っている。
三条東高のエラールは国内に残る4台のなかでも最も新しく、最も成熟した機構が採用されており、修復後は貸し出しを行うことから地域外からの期待も大きい。
西山会長は「このピアノ三条、新潟、全国で文化の発信に大きく貢献されると思う。この復元事業は大変意義あるものと考えて三条ロータリークラブとして寄付することにした」と話した。
永桶さんは「このピアノを修復するのはわたしたちの活動の一歩。修復の暁には社会と文化と産業の3つのトライアングルが美しく鳴り響くこの地、燕三条地域を目指したい」と夢を膨らませた。
また、12月9日に三条市体育文化会館でフルオーケストラによるコンサートが開かれ、入場料の一部が修繕費用に活用される。