ヤマト運輸株式会社は16日、新潟県三条市と「地域創生に関する包括連携協定」を締結したのにあわせて、三条市立大学とも寄付講座の設置に関する協定を締結した。来年度は三条市立大学の3年生のカリキュラムにヤマト運輸が教員を派遣するロジスティクス論の寄付講座がお目見えする。
ロジスティクスは本来は軍事で使われる兵站(へいたん)のことで、原材料の調達から生産、販売までの物流、それを管理する過程などを言う。ヤマト運輸がロジスティック論の寄付講座を設置するのは初めてと思われる。
寄付講座では、ものづくりに必要不可欠な物流の機能と役割を理解する。宅急便やコンビニ配送の仕組みを知ることで物流の基礎的な概念を把握し、そのうえで調達→生産→販売のプロセスを一貫したものの流れとして経営の最適化、効率化を目論むロジスティクスの実例を実際にヤマト運輸の現場見学を通じて理解する。
企業の垣根を越えてプロセスのさまざまな情報を管理し、物流の高度化を目指すサプライチェーンマネジメントや国際物流の特徴を紹介。ものづくりにおける物流戦路の事例や概念を把握し、それらが具体的にこれからの製造業にどのような成果をもたらすかが理解できるようになることを目指す。
ヤマト運輸新潟主管支店の横木剛さんが担当教員を務める。横木さんは博士(文学)で学芸員。専門は近世史で主な著書に『新潟の廻船問屋』(アミックス・2021年)がある。
16日に三条市立大学で行われた合同締結式で新潟主管支店の藤岡昌樹支店長は寄付講座について「物流はものづくりに必要不可欠な要素と考えており、学長に提案し、受けていただくことになった。物流の機能や役割について学生の本当にわかりやすく少しでも理解が深まるような講座を考えており、ぜひとも現場に来て知見を深めていただけれ」と期待した。
さらに「さまざまな社会課題があるなかで官民学が一体になって取り組む重要性は日に日に増していると我々は考える。それぞれが有する人的、物的資源を有効活用することで地域の活性化につながる」と話した。
シャハリアル学長は「日本のロジスティクスを支える企業からロジスティクス論を学べるのは大変、意義深い」、「臨場感のあるロジスティクスの最前線の企業から学べる機会を設けることができ、本当にありがたい」と感謝した。
一方、ヤマト運輸の新潟主管支店管内での自治体との包括連携協定締結は、佐渡市、燕市に次いで三条市が3例目。安全安心な地域づくり、広報と魅力発信、産業振興、防災と災害対応、地域と福祉、地域の人材育成、そのほか地方創生の実現などの分野で連携する。
三条市の滝沢亮市長はことし3月からふるさと納税の返礼品の配送で協力してもらい、寄付者から返礼品が早く届いたという声をもらっていることに感謝し、「ヤマト運輸をはじめ民間のからの支援も受けながら選びたくなるまち三条の実現に向けた取り組みを積極的に進めている」と話した。