新潟県三条市の三条六角巻凧(まきいか)を作る伝統凧職人、須藤凧屋(東裏館2)の6代目、須藤謙一さん(55)が作った三条六角巻凧をベースに制作したオブジェが新年から東京・銀座の「資生堂パーラー銀座本店」の正面ディスプレーを飾っている。3月ころまで展示されている。
須藤さんが手掛けたオブジエは2つ。正面ディスプレーを飾るのは、20枚ド(縦1,765×横1,445ミリ)と呼ばれる大きさの凧から10枚ド、7枚ド、5枚ド、3枚ドの順に5枚の凧を上から下に順につるし、連凧のようにも見える配置だ。
一部を赤く塗りつぶし、資生堂のデザインのクロニクルのように、これまでに製品に使ったデザインの部分を凧絵のように描いた。
鼻緒はない。デザイン性が高いので、三条六角巻凧をよく知る人でも一見してそれと気づかない。
もう1ひとつのオブジエは、正面に向かって右の建物の側面にある。12枚の3枚ドで構成。こちらはそれぞれの以下の上部を赤、青、オレンジ、黒などの色に塗り、同じように資生堂のデザインを描いた。これも連凧のようにS字を描くように縦に並べて展示している。
資生堂の担当者から直接、制作の依頼を受けた。担当者は凧に明るいらしく、新年の銀座本店のディスプレーに凧を使おうと全国の凧を保存展示する東京・日本橋の「凧の博物館」を訪問し、さらに「凧の博物館」の紹介で須藤さんに依頼があった。
当初は連凧のような作品を注文されたが、三条六角巻凧は連凧にはならず、連凧のような形で展示することで落ち着いた。
発注はメールでデザインデータが届き、データを等倍に拡大し、トレース。絵の具の境界がシャープになるようにマスキングを施した。
赤は紫外線が当たるとすぐに退色するため、完成後にUVカットの溶剤を塗った。その段階で赤がにじんで失敗し、納品できないものもあった。
昨年12月中旬の納期だったが、いざ納品するという段になって記録的大雪のため宅配便などストップ。やむを得ず須藤さんは完成品をブルーシートで包み、新幹線で日帰りして納品する羽目になるエピソードもあった。
また、須藤さんの作品とあわせて小窓に須藤さんが作品を制作しているようすを撮影した動画の上映や凧揚げをするようすのミニチュアの展示も行われている。
資生堂パーラーは資生堂の子会社で、のカフェや喫茶店、歌詞のの運営、菓子の製造卸も行う。銀座本店はまさにその旗艦店。「ギンザ シックスにも近く、目立つし、大勢の人が出入りして目に留めてもらえているのでは」と須藤さん。「こういう機会もめったになく、どういう所でつながるかわからないので、すごいと思う」とひょんなことから生まれた企画を喜ぶ。
「三条六角巻凧がまったく違った感じでデザイン的に使ってもらえることはあまりない。納期まで時間がなく、あまり経験値もないなかで、おもしろくやらせてもらった」と不慣れな大仕事にも満足している。