新潟県三条地域振興局は15日午前10時から加茂市産業センターで「にいがた県央マイスター」認定証授与式を行い、加茂特産の桐たんすにかかわる加茂市の2人の職人をにいがた県央マイスターに認定する。
認定されるのは、桐たんす製造の鈴木浩市さん(65)=鈴木石太郎タンス店代表=と木製建具製造の渡邊文彦さん(47)=渡辺建具店代表=。令和4年度にいがた県央マイスター選考委員会で2人をにいがた県央マイスターに推薦した。授与式では、 認定証と楯を授与し、マイスターブルゾンの贈呈、記念撮影を行う。
「にいがた県央マイスター制度」は、三条地域振興局が2005年に創設した制度。県央地域の高度な産業技術を支える卓越した技術、技能をもつ人をにいがた県央マイ
スターに認定し、その社会的認知度を高め、優れた技術の継承や後継者の育成を図り、地域産業の振興に役立つことを目的としている。今回、認定の2人含めると認定者は36人になる。今回、認定の2人のプロフィルは次の通り。
鈴木浩市さん
1957年に加茂市に生まれ、80年に創業1887年(明治20)の鈴木石太郎タンス店の4代目として家業に従事。98年に伝統工芸士に認定。2006年に加茂桐箪笥(たんす)見本市デザインコンペで「KIRI 道楽 宝箱」が加茂市長賞受賞、21年に新潟県伝統工芸士会功労者表彰を受けた。
伝統工芸品「加茂桐箪笥」の製造技術を継承し、卓越した伝統技術と創意工夫で現代の生活様式に合う和モダンを追求する伝統工芸士。加茂で約220年前から受け継がれてきた伝統工芸品「加茂桐箪笥」の製造技術を継承する。
材料の選定から加工、仕上げまでの約80工程を一貫して製造できる数少ない職人のひとり。とくに得意とする技法は、高級桐箪笥の製造に必要な「ありほぞ加工」と「剣留(けんどめ)加工」といわれる高度技術を習得し、加茂桐箪笥職人の中でもトップクラスの実力をもつ。
「ありほぞ加工」とは天板と胴板などが抜けないように接合するための技法で、のこぎりやのみ、かんななどを用いた高度な加工技術。「剣留加工」とは、たんすの強度を保ち美しい外観にするための技法で、ありほぞ加工と同様に高度な加工技術。
近年は、現代の生活様式に合う桐たんす製品や、桐の特性を生かした「エコスピーカー」などの桐小物を開発、製造し、伝統的な日本文化と現代様式を融合させた「和モダン」な製品を作り出している。
多くの箪笥職人を育成し、現在も市内の小学生や高校生の工場視察見学を受け入れるなど、伝統技術の継承と桐箪笥の普及啓発活動に精力的に取り組んでいる。
渡邊文彦さん
1975年に加茂市に生まれ、1994年から家業の渡辺建具店で働く。2003年の全国建具展示会で最高賞の内閣総理大臣賞受賞、06年「にいがたの名工」に認定、07年「現代の名工」受賞し、15年には黄綬褒章を受章するなど数多くの受賞歴がある。
江戸時代から加茂地域に受け継がれてきた木製建具、組子製作の伝統技術を継承し、卓越した技術力と創造力を生かし続ける建具職人。父親の下で木製建具の製造技術を学ぶ。全国建具展示会での内閣総理大臣賞は県内初で最年少(20代)で受賞し、卓越した技術力と創造力を兼ね備える。
建具製造のなかでも、とくに高い技術が必要とされる組子の製作で、自ら考案したデザインを基に色の異なる木材を使って幾何学文様に組み合わせるなど、創意工夫により独自の組子を創作する優れた技術を有す。組子とは、細い木片を釘を使わずに組み合わせ、緻密な幾何学的紋様を生み出す木工の伝統技法。
寺院や古民家、旅館の建具でも創建当時のデザインに復元するほか、一般生活者のオーダーに応じて、あらゆる木製品を製作するなど卓越した技術力と創造力を生かした事業活動を展開している。
若手職人に対する技術指導や技能検定講習の講師を数多く務めた経験があるほか、市内の小中学生を対象に事業所見学の受け入れや講和活動など、後継者の育成と建具製造の普及啓発活動に精力的に取り組んでいる。