新潟県警三条署(家老直貴署長)は2日、三条市内で車で排ガス自殺を図ろうとしていた50歳代の男性の自殺を直前で防ぎ、人命救助に貢献した三条市の夫婦に署長感謝状を贈った。
感謝状を受けたのは三条市・大崎山公園にある三条市グリーンスポーツセンターに勤務して間もなく12年になるセンター長の鳥羽和明さん(48)=三条市西大崎1=とスタッフの美代子さん(52)夫婦。
大崎山公園は1年前から午後8時以降の立ち入りを禁止している。8時前にバリケードを設置するため、公園に車や人が残っていないか確認するのが日課だ。
1月16日、この日は休館日だったが、いつものようにバリケードを設置しようと確認のため巡回すると、午後7時50分ごろ山頂公園の駐車場に車1台、止まっていた。
あと10分ほどで閉鎖することを知らせるため声をかけようと車に近づくと、エンジンはかかったまま。公園にあった水やりの水道ホースを使ってマフラーから出る排気ガスを後部座席の窓のすき間から車内に引き込んでいた。
窓のすき間はテープで目張りがしてあり、男性はシートの背もたれを倒してあおむけになっていた。何か実験でもしているのではという想像も頭をよぎったが、自殺しようとしていると確信した。
立ち入り禁止にするので、眠っているだけだったとしても放置しては帰れない。「ホースを抜かせてもらいます!」と声をかけてホースを抜き、「大丈夫ですか?聞こえますか?」とガンガンと窓をたたき、ドアのロックを解除するよう呼びかけた。
1分か1分半ほどで男性は目覚めた。生存を確認して110番通報した。男性はボーッとしたようすで「だめだったか」などと話していたと言う。
鳥羽さんの夫婦の誠実な人柄を知る人なら、今回の人命の救助は納得の行動とも言える。和昭さんは「結果として命を救えたのは良かった」と喜びながらも、「そういうことが私たちが管理している公園の駐車場の中で起きてしまったのは悲しいことでもあるし、心が痛む部分もある。その両方を感じている」と複雑な思いを話した。
これからも「少しでも怪しかったり不審なことがあれば、ちょっと離れたところから様子をしっかり見るとか、必要なら声をかけるとか、引き続きしていかなければならい」、「ほかの職員とも今回のことを受けて、こういう状況のときはこういうふうにしようよとか、連絡の仕方とかも含めて話をしながら日々、管理業務をしていかなければいけないと思う」。
美代子さんは「当日から数日たっているので、その後、どうされてるかなという思いもある」と男性を気遣った。現場に居合わせて「光景を見たときにすぐにちょっともうおかしいなと思ったので、そこからもう足がガクガクしてた感じだったが、ひとりの命が助かったよかったと思っている」と当時を振り返った。
怖くて声も掛けられなくてもおかしくない状況で車内の男性に声をかけて警察に通報したことに、「勇気ある行動での人命救助に非常に感謝している」と話した。