4月1日に国が「こども家庭庁」を発足したタイミングで新潟県燕市は「こども政策部」を市長部局に新設した。実質的な業務開始となった3日、こども政策部の発足式を行って所属職員を鈴木力市長が激励した。
燕市のこども政策部は、妊娠から出産、子育てまでの支援を一体的に行うのを目的に、市内外から「子育てするなら燕市で」と評価されるよう、関連施策を総合的に展開し、燕市に住みたい、住み続けたいと思ってもらえる「未来につながるまちづくり」を推進する。
こども政策部には、保育園の運営などを行う「子育て支援課」を移管し、「こども未来課」に改称。児童手当や母子保健事業、相談窓口などの業務を行う「子育て応援課」を設置した。人員は庁舎関係職員約40人に保育士など保育関係職員約150人を合わせた190人規模に。市役所職員は約600人なのでその3分の1近くで取り組む。
市役所1階の窓口には、「こども未来課」と「子育て応援課」の新しい表示板などを整備した。発足式では、こども政策部の職員を前に鈴木市長が15分近いスピーチを行ってこども政策部に込めた思いを熱く語った。
鈴木市長は、発足式を待たずに1日にはすでに新しい施策を盛り込んだ子育てガイドがホームページにアップされていたことに「非常にうれしく思っている。引き続きそのことを忘れず、取り組んでいただきたい」と話して本題に入った。話の概要は次の通り。
鈴木市長の激励のあいさつ
まず、こども政策部をつくった理由。今年度から3つの人口増戦略を含めた第3次総合計画が始まる。その中心的なテーマが「子育てするなら燕市で」と評価されるように取り組むこと。その政策を強力に推進するエンジンとして、こども政策部をつくった。
国もこども家庭庁が発足し、同じように歩調を合わせる意味でも妊娠から出産、保育、幼児教育、これら今まで複数にまたがっていた業務を一体的に進めるためにこども政策部をつくった。
燕市はどんな特徴をもって子育て政策を進め、これからも進めていくのか。人口減少対策は全国の自治体が共通の課題として取り組み、医療費助成などで各自治体が競って子育て支援に力を入れている。
燕市では県央初の病児病後児保育に取り組み、県下初の妊産婦医療費の無料化、しかも現物給付という県内でも先進的な取り組みを行ってきた。こども政策部をつくり、引き続き子育て支援のトップランナーとして走っていくために、燕市の施策の特徴を共通認識をもってほしい。燕市は3つの特徴がある。
ひとつは、ライフステージに応じた総合的で息の長い支援策。男女の出会いの支援に始まり、妊娠、出産、保育、小中学校義務教育、本来なら市町村の守備範囲でない高校生、さらに大学生の就職を対象に成長を応援し、政策をそろえる。子育て支援と教育環境の充実を一連のものとして取り組むのが特徴だ。
ふたつめの特徴は、それを部局横断的に燕市の総合力で取り組むこと。今回は健康福祉部と教育委員会の業務の一部を統合したが、男女の出会いの支援や企業の育児休業は、企画財政部や産業振興部が大きくかかわっている。
ほかにも児童図書の購入、子どもたちの海外派遣に必要な財源の調達は、市民生活部がかかわる。単にこども政策部ですべてやるのではなく、すべての部局が子どもたちの健やかな成長という観点で、何らかの形でかかわっていくのが2つ目の特徴と思っている。
そしてもうひとつは、ほかにないことと思うが、市民や企業まで子ども応援に大きかかわったということ。カンカンBOOK・福服BOOK事業、子ども応援おひさまプロジェクト。子ども夢基金の寄付、フードバンク、こども食堂と、ありとあらゆる事業に市民、企業がかかわり、物心ともに協力してくれるのが、なかなかほかの自治体にはない特徴だ。
この特徴の元をたどると良寛、長善館の精神につながると思う。だからこそ燕市でこんなことが行われていということで、大切にしていきたい。
3つ目の話は、こども政策部の職員にお願いしたいこと。燕市のライフステージに応じた総合的な子育て政策が、少子化対策という視点で見たときに肝、核になる部分だと思う。
少子化が進む理由のひとつが子育てにかかる経済的負担。あるいは身体的、精神的な負担が大きいと指摘されている。この負担をいかに軽減し、子どもを産み育てたいと思う人を増やしていくかが大きなミッションだ。
そのためには全天候型子ども遊戯施設の整備をはじめ、これまで燕市が推進してきた施策を深化、進化、真価させていく必要がある。こども家庭庁ができたので、国は経済的負担軽減を中心にさまざな策を打ち出している。その情報をいち早くキャッチし、そのうえで燕市独自の上乗せ、あるいは横出し、すき間を埋めるといった施策の可能性も検討しながら迅速かつ的確に実施できるようにしてほしい。
経済的負担の軽減で地方自治体がやれることには限界がある。燕市としては現金給付的な発想だけに陥ることなく、市民、企業の連携も含めた総合的な施策の特徴を生かしながら、身体的、精神的な負担の軽減などサービス給付の充実、質的向上を図ることで差別化を図り、子育てするなら燕市でと評価されるうように頑張っててほしい。私も頑張っていきたい。
すでに事業者の皆さんから空き缶を提供していただいて、その売却益で絵本児童図書を購入するカンカンBOOK事業というのがある。5年度からは児童図書や絵本だけではなく、保育園などで使う玩具の購入にもこの空き缶の売却益を当てさせてほしいと事業者に頼み、快く引き受けてもらった。
今年度からはカンカンBOOKではなく、カンカンBOOK TOYでいく。今、言われているモンテッソーリ教育に資するような玩具を買うことができるかもしれない。いろんな新しい発想が皆さんからどんどん出てくることを期待する。
最後に申し上げたい大切なことがある。子育て支援というと対象は保護者に意識が行きがち。保護者の経済的な負担、身体的、精神的な負担の軽減は重要で、しっかりやっていかなければならないが、それに加えて忘れてはならないことがある。
私たちが支援の対象とすべきは子どもたちそのものと思ってほしい。子どもたちが健やかに育ち、大きく変化していく社会の中で自立し、他と協力し合いながらしっかりと生きていける能力。認知能力だけではなく、非認知能力がしっかりと身につくよう支援している。
これが燕市が推進していく子育て支援教育との連携と思い、皆さんに強く意識してほしい。だからこそライフステージに応じた息の長い支援であり、子育て応援課だけではなく、こども未来課とした。
きょうは副市長、教育長からも同席してもらった。こども政策部が所管する幼児期に向けて、しっかりと子どもたちの自立や思いやりの心の基礎を育んでもらい、教育委員会にバトンタッチし、教育委員会でもさらにその能力を開花させていく。そんな連携を進めていきたい。
以上、私の思いの丈を述べさせてもらった。きょうからスタート。みんなで力を合わせて子育てするなら燕市でいうふうに評価されるように頑張っていこう。